法律ノート 第1057回 弁護士 鈴木淳司
May 18, 2017
雨がやんで、季節も良くなったので、私の事務所の人達とバーベキューを楽しみました。私は風邪気味で途中でダウンしてしまいましたが、楽しい時間を過ごしました。通常、私は事務所の人達を飲み会に誘いません。私が言うと皆、来なくてはいけない気持ちになると思い自重しています。年に一回は皆でクリスマスパーティーを楽しむのですが、そのほかにはほとんどない貴重な機会でした。まあ、私の事務所は皆仲が良く、いつもワイワイ仕事をしているので、あまり変わりはない状況ではありました。皆さんは気分転換をされていますか。
術後の経過が悪い。医療機関の法的責任を追及したい[1]
さて、今回から新しく皆さんからいただいている質問を考えていきたいと思います。かなり長いメールをいただいています。
できるだけ簡略化して、いただいている質問をまとめると「私の配偶者がある病院で腹部の手術を受けました。手術のあと、あまり回復もせず、再度手術をしなくてはならない状況が発生しています。医療機関に対して、不信感を抱いています。もちろん、最初の手術の前に、色々説明を受けていて、全快する可能性も高くはない、とは聞いていました。
しかし、再手術が必要とは聞かされていませんでした。夫婦で悩んでいるのですが、やはり法律的に責任をはっきりさせたいと思っています。医療機関に対する訴訟というのは一般的に難しいのでしょうか。」という質問です。
医療過誤ー過失による法的責任を問う
今回考える相談は、一般的に医療過誤と言われる部類の質問です。
医療過誤というのは、一般的に、医師や医療機関に「過失」があったかを問う訴訟です。
一般的に、「過失」があって、損害が生じた場合には、過失があったと認められた人や団体が損害を賠償する責任を負います。これは、日本でもアメリカでも基本的には変わりません。
法律的に問題のある間違いを発生させて他人に損害を発生させたら、その間違いを起こした人や団体が責任を負うということは、人が生きていくうえで、色々な場面で発生します。
債務不履行ー契約違反として責任を問う
もうひとつの面をみると、今回のように手術を受ける場合、手術をする側と受ける側の間に契約が存在します。
手術する側にされる側が対価を払って、合意した内容の手術をしてもらうという面があります。
この契約に沿っていない手術が行われた場合には、契約をちゃんと履行していないということになり、手術した側に債務不履行責任が生じる場合があります。このコンセプトも一般的な「契約」ではよくみかける責任ですし、皆さんが生活していれば目にすることも多いと思います。
「過失」を考える
本論について踏み込んで考える前に、すこし「過失」と「契約」という基本的な法律的なコンセプトと今回考えてみたいと思います。
「過失」というのは、かなり広汎なコンセプトです。ポカをした、という言い方だとわかり易いかもしれませんね。ただ、人がなにか間違いを犯した、というのは、何を基準に言うのか、なかなか法律家でもわかりにくいところであるのが事実です。何が「ポカ」なのか、間違いないのか、というと、度合いの問題もあります。
交通事故を考えてみてください。
飲酒運転で人に怪我を負わせれば、通常の人が話を聞けば、「それは悪いよなぁ」ということになるでしょう。法律家にとっても、そのように判断することになろうかと思います。
一方で、スーパーマーケットの駐車場で、低速で動いている車同士がぶつかってしまったような場合、どちらの方が悪いのか、なかなか判断しづらいこともあると思います。
「自分は悪くない、他人が悪いんだ」ということは簡単ですし、大人になっても、いつでも自分は悪くない、と思う人もいるのも事実です。
主観だけでは「過失」を問えない
しかし、人の「過失」を問う場合、「君のやったことが悪いんだよ」ということを法律的に言うわけですから、自分の主観だけで相手が悪いということはできません。
そうすると、「過失」というのは、第三者の目からみても、「悪いよなぁ」と判断できることが前提になります。法律的に難しく言うと、過失は客観的に判断されなければなりません。
少々難しい話を考えていますが、我慢してください。
できるだけわかりやすいように次回も続けて考えていきたいと思います。
カリフォルニアは春真っ盛りという感じです。天気や花を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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