法律ノート 第1030回 弁護士 鈴木淳司
October 25, 2016
ベイエリアも朝晩かなり涼しくなってきました。皆さんのお住いの地域はいかがでしょうか。秋野菜もずいぶんマーケットに出てきましたね。私はナスを焼いたりしていますが、先週の雨のおかげでかなりレタスが元気になってきました。サンマも食べる幸運に恵まれています。寒くなってきた季節に美味しい和食食材と温かい日本酒は本当に合うものです。みなさんも食べ過ぎ飲みすぎに注意されてください。
米政府機関から電話?!実は巧妙な詐欺(2)_1030
さて、前回から考えてきた「北カリフォルニアに10年以上住む、永住権をもった家族です。先日、IRS(いわゆる米国国税法)から電話が入り、妻が税務申告について質問をされました。かなり相手方も情報を持っていることなどから、再度自宅に電話があったときに私(夫)が電話に出て、ソーシャルセキュリティーや、勤務先の情報を確認しました。そのときに、お金が還付されるということを言われたのですが、一向に還付されません。このようなケースは、詐欺のようなものなのでしょうか。それであれば、自己の情報に関して保護の心配があるのですが、大丈夫でしょうか。」という質問を再度考えていきたいと思います。
行政機関が電話で個人情報を聞き出すことはない
前回考えましたが、アメリカの行政機関がいきなり電話で個人情報を聞いてくることはあり得ません。もしかしたら、このような電話をしてくる輩は事前に何らかの情報を持った上で、さらに個人情報を聞き出そうとしているかもしれません。
電話に出たときに、相手方がある程度の個人情報をすでに持っているという事実について、怪しむべきで、信用するべきではないのです。かりに電話で、色々聞き出そうとしても、電話で一切情報を渡さず、必ず書面で質問を送るように言うべきです。
そのときに住所を聞かれたら、住所はそちらが知っているはずなので、電話では渡さないことをはっきり伝えることが重要です。
流出情報の回収は不可能、そこで
今回の質問のように、すでに情報を渡してしまった場合、その渡した情報を回収するのは簡単ではありません。これは現実として諦めるしかないと思います。そこで、渡した情報を不正に使われないようにモニターするしかないと思います。
まず、重要なのは可能であれば警察の調書を作ることです。警察に赴かなくても、現在ではインターネットで被害届をだせる警察もあります。連邦政府にも州の政府にも、消費者保護を司る行政機関があります。そのような団体に相談をすることも考えられます。
ただ、これらの行政機関に相談をしたとしても、何か積極的に保護をしてくれる、ということではないでしょう。
クレジットレポートを定期に監視
今までソーシャルセキュリティー番号などを不正に使用して行われる犯罪というのは、基本的にクレジットカードを不正につくられる、とか、ローンを不正に借りられてしまう、といったお金に関する話がほとんどです。
したがって、米国でいうクレジットレポートを定期的にモニターしていくのが、不正を発見するための効果的な方法です。
それでは、どのように不正や不正に関することをモニターしていくのかというと、クレジットレポートを発行する会社が大きなところで4社ほどあるのですが、そこのレポートを監視していくということになります。有料で、このようなクレジットモニタリングを提供する会社もあります。
身近な金融機関や保険会社も活用
一方で、金融機関や保険会社などでは無料でクレジットモニタリングのサービスを付帯サービスとして提供しているところもあります。結局、クレジットの情報を最終的に使用するのは、金融機関や保険会社ですので、これらの会社は情報収集を常時しているわけですし、顧客のクレジットを守ることもひいては自己防衛になります。
なので、取引のある金融機関や保険の代理店に、クレジットモニタリングをどこか無料で提供していないか、聞いてみると良いと思います。たとえ、一年間だけ無料だとしても、その一年間は情報をもらえるのですから、注意を払えるとは思います。私も利用していますが、週に一度、報告のメールをもらっています。
自分の情報には注意を払う
残念ながら、電話で知らない第三者に情報を渡してしまうと、その情報を手元に何もなかったように戻すということは難しいのが現状なので、悪用されないように気をつけていくということが現状では最善なのかもしれません。とにかく、自己の情報を第三者に渡すのは最小限度にしていきたいですね。
次回からまた新しい質問を考えていきたいと思います。ベイエリアでは、ハロウィンの飾りが増えてきました。もう10月も終わりですね。風が強い日もあるので、体調に気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。
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