米国での起業とビザ。友人を助けたいがリスクは?[3]





法律ノート 第1044回 弁護士 鈴木淳司
February 6, 2017
トランプ政権の移民行政政策が司法の判断にまでに持ち込まれました。
連邦最高裁の判断はまだ出てきていませんが、今後アメリカにおける司法の役割に注目したいところです。私も法曹ですので、判断の結果の如何に関わらず、裁判所がどのような理由に基づいて行政政策の是非を判断するのか、非常に興味を持っています。建国当初から、マーヴェリー事件などを通して司法を尊重してきた国です。
今、アメリカ合衆国の三権分立が根本から試されているので、目が離せません。
皆さんも冷静に今のアメリカを分析されていますか。
「米国での起業とビザ。友人を助けたいがリスクは?」[3]
さて、前二回「日本にいる友人が米国で起業をして、ビザをとりたいという相談を受けています。まずは、アメリカに在住している私が会社を起こして、日本からの投資を受け、友人にビザを出せないかと考えています。このようなケースにおいて、質問はたくさんあるのですが、まず友人を助けるという観点から会社の社長などになったときに、何か私個人の責任が発生しないかと心配になってきています。あとで友人と揉めるのも本意ではないので、リスクのあることはしたくないというのが本音です。」という質問を考えてきました。
前回までに検討したことー善管注意義務/忠実義務/会計上の義務
前回は、少々、難しかったかもしれませんが、善管注意義務と忠実義務という会社の執行役または取締役が負う可能性のある責任を考えました。難しかったらまた法律ノートに質問をいただければと思います。また、会計上の義務も考えました。
要するに、会社の運営で、何か過失が認められると、場合によっては、第三者や会社の株主から訴訟を提起されてしまう可能性があるのです。そして、そのなかで、会社の会計についても咎められる可能性があるのです。
私も自己の経験ですが、かなりの数、善管注意義務違反を主張する訴訟を見てきましたが、株主と取締役が争う事件はかなり泥沼になります。よく、泥沼の離婚裁判、などと言いますが、もちろん感情的になって泥沼化することもあると思います。しかし、本当の理由は婚姻期間が長ければ長いほど、お互いに言いたいことが積もり、その蓄積されたものが裁判で争われることになるからです。
会社の善管注意義務違反の事件も似たような側面があって、長期の関係からは、様々な主張や問題点が発生し、簡単には白黒付けにくい部分があるのです。気軽にアメリカの会社の立ち上げを手伝うだけではなく、運営に関わるのであれば、かなり注意をしなければいけないポイントだと思います。
争いの中心は「お金」
ほとんどの場合、株主と取締役の間に紛争がおきる原因は「お金」です。たとえば、今回の質問の例を将来的に考えると、海を越えたアメリカで何をやっているのか、日本にいる株主は見えない部分も多く、不信感が生じると、かなり増幅していく可能性も大きいわけです。
会社の経理もちゃんとしなければなりませんが、実際問題として会社を立ち上げる場合、会社の会計と個人の会計が混同することも少なくありません。たとえば、新しい会社はクレジットカードも簡単には作れませんし、信用がないため、個人保証を求められることもあると思います。こういった状況から、取締役になった人の本意ではないかもしれませんが、会計の混同が生じることもかなり想定できるのです。
事前にやっておくことー契約の確認ー
最初は気軽に友達を助ける意図があっても、プロジェクトが進むと、色々なしがらみが出てくるのです。ここで、プロジェクトがはじまる前に、まずやっておくべきことがあります。それは、契約関係をはっきりさせておくことです。通常は、社長などで会社に入る場合には、雇用契約が考えられますが、取締役の場合などは、委任契約なども考えられます。場合によっては、コンサルタントとしての契約もあり得るでしょう。契約の名前は、実はどうでも良いといえば、どうでも良く、内容をよく吟味して書くことが重要です。つまり内実ある契約書が必要ということになります。どのような契約の内容を考えるべきなのか、次回続けて考えていきたいと思います。
まだ、冬の天気が続きますし、体調を崩されている方も多いと思います。こういうときは、とにかくできるだけ陽に当たって、よく寝るしかないですね。 とにかく春を楽しみにしながらまた一週間がんばっていきましょうね。




 

作成者: jinkencom

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