911から今年で10年

September 04, 2011




 
 ハワイに出張した際、ハワイパシフィックプレスの社長さんとワインを飲みながら昼食を一緒にさせてもらいました。そのときに、「911の事件から、今年で10年。何か、それにちなんだ記事を書いてください」と言われました。そのときに気づきましたが、もう10年です。子供の頃は、夏休みはフォーエバーのように感じましたが、年をとると、10年が瞬く間に過ぎていきますね。
 私は、10年前も弁護士をしていて、911の前夜、クライアント企業のインターン生数十名とステーキを食べていたように思います。若い人達と一緒に、いろいろな話をして、懲りずにワインを飲んでいたように思います。いつも飲んでますね。
 そして、結構良い気分で就寝したことを覚えています。事務所の他の弁護士からの電話で目覚めニュースをみると、同時多発テロの映像が生々しくテレビに映っていました。その頃はブラウン管のテレビでしたが、今ではどの家庭でもフラットな画面ですね。
 法律ノートかじんけんニュースか、どちらでこの911から10年を取り上げようか迷ったのですが、このじんけんニュースで取り上げたのは、やはり移民法制度が一番同時多発テロで影響を受けたからです。アメリカにある法律で、移民法制度が一番変わったと思います。
 移民法制度で一番変わったエリアは、犯罪歴の調査だと思います。
 移民法専門を標章する弁護士はビザなどの申請書類ばかり作っているのですが、それだけでは対応できない状況になりました。刑法にも長けていないと、ビザ申請などでもおもわぬ落とし穴にはまる可能性が発生する状況になったのです。
 私が見ているだけでも、多くの日本人や他の外国人が、犯罪に関わる事情で、何百件と強制送還されています。
 永住権を持っていても、そのような状況には変わりはなく、一時期は20年以上前の万引き事件を引き合いにだされ強制送還が問題になった事件もありました。
 911事件以来、アメリカ政府が外国人の犯罪歴に神経をとがらせはじめました。
 現在でも、911事件の影響で、過去に犯罪歴や逮捕歴がある場合には、ビザの取得や入国審査が遅らされることが多くあります。
 すなわち、バックグラウンドチェックを厳格に課すので、許可や入国に時間がかかるようになりました。
 注意したいのは、有罪にならない場合でも、逮捕歴があるということが入国許可の審査対象になりますし、申告しなければ強制送還の対象となることが厳格に運用されることになったことです。
 これらの犯罪にかかわる審査は非常に厳格に運用されることになったというのが現状です。この犯罪歴の調査に関しては、連邦政府で現在72の独立したオフィスを構えており、その連邦オフィスが各州、郡などの行政機関と情報を共有しているという状況のようです。
 これらの犯罪歴の調査は、テロリスト対策の一環として位置づけられています。911事件以来、飛行機に搭乗する乗客のリストは100%調査され、危険者リストと照らし合わされています。特に外国人の調査は、国際線搭乗前に、その外国人の情報がアメリカ政府に渡されるようになりました。
 また、国境近くでの身分確認が強化されました。さらに、飛行機の搭乗する際には、セキュリティチェックが大幅に強化されました。
 911事件の当日、ハイジャック犯の一群が4つの空港から搭乗しましたが、その際のセキュリティチェックの際、8名が再度セキュリティチェックの対象となっていました。その中の2名は特に容疑があるとセキュリティの段階で思われていましたが、結局全員搭乗を許されてしまいました。その反省から、セキュリティチェックが大幅に強化されたのです。
 日本人にとって、目にする移民法の変遷の一番に挙げられるのは、ビザ・ウェーバープログラムだと思います。ビザ無しで入国する外国人について、入国前に詳細な情報を提供させることで、虚偽内容に基づく入国を避けるという方向で申請方法が進化してきました。
 現在では電子的に渡航に際して個人情報を提供していますが、このサービスを導入してから、2004年には虚偽情報に基づく入国の試みが712件あったのですが、2010年には36件に減少しています。また、外国人留学生の管理も厳しくなりました。現在では、プログラムが作られ(the International Student and Exchange Visitor Program (SEVP))、Fビザなどでアメリカに滞在する外国人の行動がモニターされるようになりました。
 アメリカに入国する際に外国人には指紋と顔写真の採取が義務付けられるようになりました。このプログラムをUS-VISITプログラムと呼びます。
 このプログラムを利用して、テロ対策もしていますが、同時に不法滞在者の捜索にも使われるようになりました。さらにUS-VISITプログラムの一環として、2010年以降に発給される永住権カードには、電子チップが組み込まれ、その永住権保持者の情報に簡単にアクセスできるようになりました。
 以上のように、外国人の合衆国入国、滞在および飛行機による移動などにおいて、様々な変化がこの10年で起きました。
 国土安全省(DHS)の創設以来、日本人のアメリカへのアクセスも大きく変わったといえます。アメリカの移民政策のなかで、この10年間ほどドラスティックな変化があった時期はないのではないでしょうか。オバマ大統領になっても、結局外国人に対する対策は厳しくなり続け、取るに足りない逮捕歴で強制送還されたり、今まで何十年も問題なく過ごしてきた人たちが、いきなり逮捕されたりしています。テロ対策の歪が露呈しています。
 カリフォルニア州などでは、メキシコからの不法移民で農業が賄われている部分が大きいのに、一方ではその人達を逮捕強制送還するという矛盾は今でも続いています。
 もちろんテロ対策はアメリカにとって最重要であることは否めませんが、一方でその政策の犠牲になっている外国人救済にもスポットライトをあてて、魅力のある移民受け入れ国になってほしいと思っています。


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作成者: jinkencom

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