じんけんニュース 01-08-2025 弁護士 鈴木淳司
読者の皆さん、明けましておめでとうございます。
今年最初のじんけんニュースです。
本来であれば、昨年末に出すべきでしたが、大統領が交代することもあり、なにかニュースが出てくるのでは、と思っていたら年をまたいでいました。
議会襲撃からちょうど4年後になりましたが、大統領選挙で負けたハリス候補がトランプの勝利宣言をしていましたね。
皮肉なものです。
じんけんニュースについては2025年も続けていきたいと思います。
じんけんのスタッフの人達もがんばってくれています。
じんけん一同どうか2025年もよろしくお願いいたします。
2024年は、やはりトランプの再選が大きな話題でありましたが、その当選を受けて私の所属する法律事務所でも移民に関する問い合わせが急増しました。
色々な憶測がSNSやネットで飛び交って、日本人や日系ビジネスも過度に心配されている方々も見受けました。
また、移民関係の申請についても、かなり駆け込み需要もありました。
2024年には、上記のようなトランプ政権になった場合の移民政策に関する憂慮がみられましたが、この原稿を書いている時点では、実際のところ日本人やビジネスはトランプ政権になったからといって、即時、移民政策の影響を受け難いということです。
トランプ政権においては、メキシコをはじめ中南米からの不法移民、増え続ける各国からの難民申請者等のコントロールが最優先課題であります。
ビジネスや家族関係を通したビザ・永住権申請は後出しになってくると思います。
これらの難民申請などについては、JINKEN.COMのAudienceに関しては当てはまらないと思いますので、すぐに影響がでてくるということはないと考えています。
ただ、外国人の移住者にとっては、憶測であってもトランプ政権では影響がでる、という考えが強く、現在アメリカにおいて移民ビザ(永住権)申請の手続きにかなりの遅延が出てしまっていることは日本人も例外ではありません。
アジアで見ても、中国やインドならば死活問題が絡むかも知れませんが、移民の観点からは日本はまだまだ優遇されている国です。
また景気という観点からは2025年以降の方がアメリカでは良くなることが予想されますので、経済動向の方が移民政策よりも遥かに日本人に影響してくると思います。
皆さんが心配される気持ちはよく分かりますが、落ち着いて政権発足後の情報・状況を注視しつつ、対応をしていけば、そこまで深刻な移民法の問題がすぐに出てくるという状況ではありません。
ただ、アメリカの大統領は強大な権限を持っています。
ですので、トランプ大統領が就任する1月20日には、多数の大統領令によるコントロールが出されるのではないか、と考えられています。
大統領令はもちろん移民政策だけではなく、すべての政策に対して発令されます。
したがって、どのような大統領令がでてくるのか、その動向は注意していかなければならないと思っています。
すでにトランプ次期大統領は、どのような政策を推進するのか、SNSで投稿をしていますが、ビザや永住権については、不法移民関連以外では意思を明らかにしていません。
しかし、想定外の影響が出る大統領令には注意しておかなければならないと思います。
移民局のデジタル化も進みつつあり、オンライン申請も増えつつあります。
昨年じんけんニュースでも度々取り上げましたが、H-1Bは2024年(FiscalYear 2025 H-1B Cap)から、抽選のRegistrationから、当選者のFilingまで、全てのプロセスをオンラインで行えるようになりました。
特にRegistrationの段階で講じられた不正な重複登録防止対策が上手くいき、前年度の異常な倍率が本来あるべき数値に戻りました。
システム的にはうまくいったのですが、一方で2025年(Fiscal Year 2026 H-1B Cap)からは、オンラインの抽選登録が始まって以来ずっと$10だったRegistration Feeが$215に大幅に値上げされます。
比率にすると2,050%増ということになりますが、一人当たり$205増で登録をやめる企業は多くないだろうと、足元を見られている印象です。
また4月1日から移民局のFiling Feeの値上げやRule改定があったことにも触れました。
一般的な申請のFiling Feeだけで見ると然程の値上げではない(逆に若干値下げされたものもある)ですが、Rule変更に伴い倍近くになった申請もあります。
米国内で永住権を申請する際のAdjustment of Statusは、$1,225のI-485 Filing Fee(14歳未満は$750)を支払えば、同時に申請する労働許可(I-765)と旅行許可(I-131)のFiling Feeは無料でした。
しかし2024年4月の改定で、I-485 Filing Feeが$1,440(14歳未満は$950)に値上がりしただけではなく、I-765が$260(I-485と抱き合わせでない申請の場合は$520なので、それでも半額)、I-131が$630(こちらはI-485と抱き合わせでない場合も同額)が追加で掛かることになりました。
一人当たり$1,105、実に90%の値上がり(14歳未満は$830、110%)となりました。
これも先述のH-1B Registrationと同様に「じゃあやめます」というものでもないですが、特に家族が多い世帯では負担になり得ます。
電子化や不正防止対策などは理解できますが、では効率化も確実に進んでいるかというとかなり疑問もあります。
新たなシステムやルールが施行される度に、ウェブサイトはダウンを繰り返し、申請がRejectされて返ってきてしまうケース(誤りがなくても)も続発しました。
折角お金をかけるのであれば、結果が伴うものを期待したいのですが、なかなかそうならないのも移民だなと改めて感じます。
今回は、全体的に移民行政がどのような方向になっているのかを考えました。
お金はかかり、システム的には理念は良いがうまく機能していない、という現状であります。
政策的には、まだ不明ですが、なにかいきなり外国人滞在者全体の不利益になるようなことは起きないとは思います。
ただ、今年は移民法については、いろいろ今までとは違った方向での動きが考えられます。
また皆さんにご紹介して、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
それでは、今年もじんけん、そしてじんけんニュースをよろしくお願いいたします。