アメリカでの婚約トラブル_1449

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1449回 弁護士 鈴木淳司
Dec 22, 2024(Updated July 7, 2026)

 子どもの頃から慣れ親しんでいるテレビに出ていた中山美穂さんや、野球のリッキー・ヘンダーソンが年末になって相次いで他界されているのを見て、なんとなく「死」ということについて考えさせられています。
誰でもいつかは死ぬわけで、自分を振り返ったり先をみたりしています。
やはり健康は大事ですが、酒も好き、という自分の葛藤もあります。
とにかく、後悔だけはしないように仕事ややりたいことをがんばっていきたいな、と最近は思っています。
寒くなってきましたが、皆さんはお元気にされているでしょうか。


 さて、今回から、また新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。

いただいている質問は日本人女性からのものですが、内容をまとめると
「SNSでアメリカ人(男性)と知り合って、渡米してきています。まだ、渡米してきてから1ヶ月程度です。日本での仕事をやめて結婚をする前提でした。すでに渡米前には一年以上やり取りをしていますし、彼が日本に来て一度会ったこともあります。ところが、渡米してから彼は結婚をやめたいと言い出し、私とも一緒に住みたくないということで、今は急遽一人で借りたところに住んでいます。私はビザ無し渡航でアメリカに入国していますので、あと40日ほどで結婚が成り立たなければ日本に戻らなくてはいけない状況です。このような状況のなか、日本に戻るとすると、仕事もなく住むところも引き払ってきたので、かなりのダメージを受ける状況なのですが、なにか訴訟を考えられないでしょうか。」
というものです。

かなり長い質問でしたが、まとめてみました。
できるだけ、もともといただいている質問の趣旨を私なりに残したつもりです。

ビザ免除渡航(ESTA)の滞在は原則90日まで

 今回のアメリカ渡航は、いわゆる婚約ビザ(Kビザ)ではなく、日本人がアメリカに一時的に旅行するためのビザ無し渡航ということで、アメリカ市民権を持つ人と婚姻をする以外には90日を超えてアメリカに滞在し続けるのは難しい状況です。

今回質問されている方も、特段の理由がない場合には、渡米してから90日以内にアメリカを出なければならない状況だと思います。

この点については、結婚、婚約云々の話があったとしても、移民法の観点から常に頭においておかなければいけないポイントです。

訴訟には時間と費用がかかる現実

 相手のアメリカ人の方に対しては、訴訟を検討されたいということです。

民事訴訟であれば、かりに今回質問された方が日本にいたとしても提起は可能だとは思います。

ただ、何度か渡米をして、証人尋問をしたり、証拠開示請求に応じなければならなくなります。

これらの費用については、最後まで裁判で争って裁判所からコストに関して支払い命令がでなければ、自腹で払うことになります。

ですので、訴訟をするということについても、金銭的なリスクはついてまわります。
これが一般論です。

「婚約していた」だけでは訴えにくい——ハートバーム法

 今回質問されている内容をみると、すぐにどのようなことに対して訴訟を提起するのが良いのか、私には良いアイディアはありません。

少なくともカリフォルニア州では、正式な婚約が成立していても、婚約を破棄されたこと自体を理由とする損害賠償請求は認められていません(カリフォルニア州民法§43.5、§43.4)。ですので、「正式に婚約していたのに破棄された」という一点だけでは、そのまま訴訟につなげることは、少なくともカリフォルニア州では難しいのです。

ただし、婚約を前提として相手に渡した金銭や財産については、返還を請求できる可能性があります。

しかし、今回質問者の方は、指輪等の贈与の返還というより、渡米に伴う損害の回復を望まれているように読めます。また、フィアンセビザで渡航しているわけではなく、一時的な観光目的の入国ということでアメリカに入国されています。

ですので、かりに何らかの請求を検討するとしても、婚約破棄そのものを訴えるのではなく、相手との具体的な約束ややり取りといった事実関係を、一つひとつ確認していくことが出発点になります。

なお、婚約破棄の訴えを今も認める州もわずかにありますので、実際にどの州にお住まいかによっても結論は変わってきます。

相手との「約束」や意思の合致はあったか

今回質問されている方のメールからは不明瞭ですが、単に自分が結婚するので仕事をやめた、住んでいるところを引き払った、という事実だけでは婚約を示す証拠にはなりません。

やはり、相手からどのような連絡が来て、その連絡に乗って自分も行動をしたのか、などの一連の事実を示す必要があるのです。このような、相手方との意思の合致がなければ、婚約した、とは言えません。

かりに何らかの請求を検討するとしても、婚約破棄そのものではなく、たとえば具体的な金銭のやり取りや贈与、明確な約束など『別の法律構成が成り立つ事実』があるかどうかを、まず一つひとつ検討していく必要があると思います。

これまでの事実関係を整理

 残念ながら、今回の質問については、恋愛関係でかなり傷ついたりされているようでしたが、法律論として、すぐにこのままアメリカの滞在を続けられるとは言えませんし、婚約関係をしっかり主張できないと訴訟も維持はできないと思います。

「結婚をしたい」というだけでは、フィアンセとは即評価されないので、かりに訴訟をしたいと考えるのであれば、これまでに積み上げてきた事実関係を法律家にちゃんと評価してもらうのが良いと思います。

 今回いただいた質問に関してはここまでにしたいと思います。


次回はもう今年最後の法律ノートになります。
一年早かったですね。ぜひ、ホリデーシーズン、体調に注意して、一年を振り返りながら、リラックスした時間を過ごしてください

また、次回まで仕事をされている方も多いとは思いますが、ラストスパートがんばっていきましょうね。

(本記事は2024年12月公開の内容を、JINKEN.COM事務局にて2026年に法令面を見直して更新しています)

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本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の個別案件に対する法的助言ではありません。記載内容は更新時点(2026年7月)の情報に基づいており、法律や規制は変更される可能性があります。また、婚約や婚姻をめぐる取り扱いは州によって異なります。

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作成者: jinkencom

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