法律ノート 第1232回 弁護士 鈴木淳司
October 4, 2020
現職大統領がコロナに罹患しました。重症化していないということですが、やはりアメリカでの蔓延を象徴するような出来事だと思います。すでに20万人以上が亡くなっているわけで、これ以上の蔓延を一人ひとりが対策しなければならないという意識を持つ警鐘として人々が受け止めてくれないと、アメリカでの収束は遠のくのではないでしょうか。少なくとも一人ひとりが手の消毒とマスクを徹底していかなければならないと思います。
会社をたたむー法的な手続きは?(3)_1232
さて、前二回考えてきた「日本とアメリカの間で、インターネット売買の仲介をしている会社を経営しています(経営はカリフォルニア州)。最近コロナ禍によって売上が激減し、会社を畳もうと思っています。カリフォルニア州の法人として活動をしていたのですが、会社の営業活動を一切やめることを前提でどのような法的手続きを取ったら良いのか教えてください。」という質問を続けて考えていきましょう。
いわゆる破産ーBankruptcy
前回までで、私的にビジネスを整理する方法を考えました。今回は、公的な制度を利用する場合を考えていきたいと思います。いわゆる破産(Bankruptcy)という制度です。
破産申請をすると、裁判所が、その人やビジネスの財産を詳細に調査します。そのうえで、裁判所が債権者に対して、破産申請者が支払いをできるのかどうかを判断します。
破産は公的な制度ですから、公に破産が知られることになります。
そして、破産申請後は、以下考えますが、色々な法的効果が生じますので、申請に関しては注意が必要です。
破産というのは、州法ではなく連邦法の分野になります。ですので、基本的な枠組みはアメリカ全土で共通しています。
また、弁護士だけでは対応できないこともあり、ファイナンシャルプランナーといった金融や財産関係に詳しい人のアドバイスも必要です。ですので、いきなり弁護士に相談するよりも、できれば通常付き合っている会計士、税理の専門などの人にまず相談するのが良いかもしれません。
そして、お金の流れをちゃんと掴んで、そのうえで、法律の専門家を入れるというのが、効率的だと思います。
破産の方法は3つ
破産法には、大きく分けて、三種類の破産の方法が規定されています。
一般的にはチャプター7,同11,そして同13とアメリカでは呼ばれています。破産と言っても、内容には色々な差があります。
もちろん、専門家に相談をして、どの方法論が良いのか考えなくてはなりませんが、コストなども違いがあるので、具体的な相談過程でどのタイプの破産が最適か絞っていく必要があります。
消滅型か再建型か
大きくわけて、破産には消滅型というものと、再建型というものがあります。
消滅型と呼ばれるものは、債務に関して「免責」されるタイプです。
免責というのは、債務があってももう払えないので、払わない、ということは許しても、財産については売って債務に補填しなければならない方法論です。
もう一つの再建型というのは、よく大規模な会社で使われますが、債務が膨らんでしまって、キャッシュフローが詰まった場合、いったん法律の力を使って、ビジネスは続け、一方では既存の債務に関して支払いを継続できるプランを作っていくという方法論です。
免責型はチャプター7で、再建型はチャプター11,そして、3−5年の期限を区切って債務の返済をし、債権を目指すのがチャプター13となります。免責型であろうと再建型であろうと、法律で詳しく規定がされていますが、すべての債務が免責や再建の対象となるかというとそうでもないですし、財産によっては、破産法で守られる場合もあります。
今回の質問をみると、ビジネスを継続する意思はないようで、廃業を中心に考えられていますね。そうすると、具体的な状況はわかりませんが、まずは免責タイプの破産が良いのではないかと思われます。ただ、どのような財産があるのか、債務についてはどのような契約に基づくのかなど、詳しく検討しなければならないと思います。
そして免責型であればチャプター7を申請していくということになります。
チャプター7は個人でも法人でも、また場合によっては両方同時に利用可能であります。そして、再建を行う場合に比べ、用意する書類や情報が少なく複雑さもないので、費用的にも一般的には低く抑えられると思います。
次回続けて考えていきましょう。
秋になってきましたが、カリフォルニアではまだ火事が止まりません。ゆっくり秋の味覚とはいえない状況ですが、気を抜かずにまた一週間がんばっていきましょう。
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