法律ノート 第985回 弁護士 鈴木淳司
Dec. 15, 2015
私の所属する事務所のホリデーパーティーは無事に終わりました。毎年ビンゴをやるのですが、これがかなり盛り上がります。年末の楽しいひとときを事務所全体で過ごすことができました。日本では年末年始、アメリカでは12月が特に「飲み会」が多いので、皆さんも色々なところでの飲食が増えているのだと思います。風邪も流行っていますが、胃腸も大切にされてください。
アメリカで不動産投資をしたい_985
さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきましょう。いただいた質問をまとめると「日本に住むものです。米国、カリフォルニア州において不動産投資を考えています。現在いくつかの物件に関する情報を取り寄せて勉強しているところです。アメリカでは、登記については土地建物で一つの登記ということを聞いていましたが、書類によっては、土地建物が別々に評価されているものも見受けられました。実際、米国における土地建物の所有がどのようになっているのか教えてください。」というものです。
日本では、土地と建物は別々の独立した不動産
日本の民法および不動産を司る法律においては、土地と建物は別々の独立した不動産として規定されています。私も日本で民法を学んでいたときに、教授から土地建物が独立した経緯を聞きびっくりした記憶がありますが、かなりアバウトに決まったようです。
民法の内容を決めていく段階で、最終的には1票差で決まったようですが、フランスやドイツの法律を参考にしてどちらがよいのか、かなり議論されたようです。ヨーロッパ諸国の建物は石でできているものが多く、耐用年数もかなり長くなるわけですが、木造の日本家屋では建物が朽ちるサイクルがはやくなることが考慮されたようです。
未だに日本では、土地と建物が別々の所有者に帰属することができるので、様々な難しい法律の問題が生じます。法律的な話になりますが、法定地上権の問題、借家の問題などは土地建物が別々の所有者に属することになった帰結でもあります。
私はかなり、この物権法および担保物権法と言われる分野が嫌いではありませんので、もしどなたか読者の方の質問があれば法律ノートで考えていきたいと思います。
アメリカでは土地と建物は必ず一つの登記
日本と比較するとアメリカではシンプルで、土地と建物の所有者は同一となります。もちろん所有者が複数いる場合もありますが、その場合でも土地と建物は一括りであり、全部に対して複数の所有者が共有することになります。
したがって、アメリカでは土地建物は別々の登記とならず、必ず一つの登記になります。アメリカでは日本でいう「登記」という制度は「譲渡証書(Deed)」に該当します。日本でいうと、登記ではなくどちらかというと公示に使わない「権利証」をアメリカでは公に開示して土地の所有権を明らかにするというニュアンスでしょうか。
したがって、土地建物の売買をする場合には、所有者がどのような「Deed」を持っているのかを確認することが法律的な精査の第一歩になります。
今回質問されている方も、所有権を確認するためにはまず、どのようなDeedが現存するのか確定するのが良いでしょう。Deedの種類にもかなり多くの種類が存在しますので、それぞれの意味を考える必要があります。法律ノートでは、また質問があったときに考えたいと思います。
固定資産税の算定では土地と建物を別々に評価
今回、質問されている方が、土地建物が別々に評価されているということをおっしゃっていますが、これはたぶん固定資産税(Property Tax)の支払明細のことを指していると思われます。
税法は、民法の物権とはまったく違う視点で定められています。土地と建物を別々にどの程度の評価になるか算定して、該当する不動産全体の固定資産税を算出しているわけですね。土地の年代は問題になりませんが、建物についてはどの程度の大きさか、どの程度の古さかなどを基準にして固定資産税が算定されるのです。
このようにどのような法律かによって土地建物について考え方が違うのですね。ただ、根幹としての土地建物所有の法律としては、アメリカでは土地建物はひとつの不動産と考えられているということは覚えておいてください。
次回また新しく頂いている質問を考えていきたいと思います。年末になり、寒いのに忙しい日々が続きますが、体調に注意してマタ一週間頑張っていきましょうね。
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