法律ノート 第1071回 弁護士 鈴木淳司
August 21, 2017
夏休みも佳境ですね。今年の夏は、カリフォルニア州でもかなり大規模な火事が相次ぎました。さらに異常な暑さも続きました。乾燥しているのは、まだ暑さ対策をし易いのですが、冬に大雨になった反動なのかカピカピに乾燥しきっています。日本でも、梅雨のような天気になったり異常な暑さになったりと、夏バテの方も多いと思います。気候が変だと思うのは私だけではないと思うのですが、政治家はそう考えない人もアメリカではいるようですね。
皆さんはこの夏をどのようにお過ごしでしたか。
子どもの監護と養育費[1]-1071
さて、今回から皆さんからいただいている質問に新たにお答えしていきたいと思います。今回いただいている質問をまとめると以下のようになります。
「日本在住のシングルマザーです。アメリカで結婚、出産しました。夫とアメリカで離婚し、子供を日本(関西圏)で育てています。夫はアメリカと日本を行き来し、夏休みの間は子供と時間を過ごすという取決めでしたが、夫の仕事の都合もあって、それもできずに、再度、子供の監護について揉めています。揉めている一つの理由として、今まで養育費を夫はまったく支払っていません。私は日本にいるのですが、このような場合に養育費の請求をまずできないものでしょうか。私は、私の父母に頼って肩身が狭い思いをしながら、子供を育てています。」という内容になります。
かなり具体的な質問でしたが、できれば離婚を認めた裁判所(アメリカですが)での対応を至急考えた方が良いと思います。
今回は養育費の取決め遵守について考えていきたいと思います。
シングルマザーの現実
まず、今回の事例のように離婚が成立し、子供も母親方に基本的には引き取られ、監護権は父母が行使をするというような場合、子供の面倒を見るための費用は稼いでいる方が支払うことになるのが一般的です。
今回質問されている方のようにシングルマザーになると、子供の世話もあり、かなり生活を維持することが難しくなるのが現実です。
今回質問されている方も、日本でパートを2つ掛け持ちで行いながら、親の手を借りて子供を育てている様子が伺われるのですが、自分も無理をしていらっしゃることは明らかですし、その歪が子供さんにも影響している様子がわかります。
自分が一度は好きになって子供まで産んだのですから、自分はがんばらなければならないという気持ちは良くわかるのですが、子供にしてみたら単なる迷惑かもしれません。やはり、子供ができるだけ良い環境で育ってもらうためには、親の問題は親の間だけにしておくべきかもしれませんね。
養育費ー子どもにとって最良の方法は何か
基本的に養育費というのは、カリフォルニア州では、両親の収入や財産を勘案して決められます。
多く稼いで、多く財産を持っている方から支払われるべきであるということが基本で、ある程度「相場」というのは決まっています。
もちろん、両親にも、山もあり谷もあるわけですから、それに応じて支払いの変更も裁判所に申し立てることができますが、離婚の際に決まった養育費の支払いは、裁判所の変更が認められるまで続ける必要があります。
子供のことを考えたら、そうするのが子供の利益になるという法律の判断です。
カリフォルニア州の養育費ー泣き寝入りしない方法
そうすると、今回質問されている方のように、すでにカリフォルニア州の裁判所で養育費の取決めがなされているのに、養育費を受けられていない場合には、まず、今まで生じている養育費の支払いについて請求をしたいと思うのは当然です。
ところが、すでに今回の質問をされている方は日本にいます。そうすると、どのように養育費を請求すればよいのかわかりません。夫が自発的に養育費を支払わなければ、何らかの法的な請求をしなければならないことになります。
このような場合、日本に在住していると日本の弁護士に相談しなければならなくなりますが、日本の弁護士であれば、泣き寝入りするか、日本で裁判を提起して、判決を取って、その判決をなんとかアメリカで執行していかなければならない、といったアドバイスをすることになるかもしれません。
しかし、少なくともカリフォルニア州ですでに決まっている養育費の取決めにおいては、そのようなことをする必要はありません。
ここから次回考えていきましょう。
アメリカの街では、もうハロウィンに向けて、仮装を売る店がオープンしています。夏が終わると、バタバタと年末に向けてイベントが目白押しですね。
一年経つのは早いですが、一日、一日大事にしながらまた一週間がんばっていきましょうね。