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Washington DC Capitol

コロナウィルス蔓延とアメリカ刑事司法の柔軟性_1208

法律ノート 第1208回 弁護士 鈴木淳司
April 13, 2020

 どこもかしこもコロナ一色で、外出もままならない今日このごろですが、皆さんの士気はいかがでしょうか。新潟の友人弁護士がとても綺麗な桜の写真を送ってくれました。人間はあたふたしていますが、季節は、そして自然は人間の問題とは関係なく流れていくのですね。人間の生死が毎日のニューズラインになってしまっていますが、やはり人間はいつでも大自然と一緒に行きているわけです。こういうときこそ、自然を楽しみたいものです。花粉が大変ですが、花が綺麗な季節ですね。植物の勢いに元気をもらいましょう。

 今回は、いち早くサンフランシスコもロックダウンされているのですが、こういうときに弁護士がどのような仕事をしているのか、いくつか拾って、皆さんに自宅待機の弁護士は「こんなことしているんだ」ということを知ってもらえたらいいのかな、と思って徒然書かせてください。

皆さんからいただいている質問を一回休ませていただき、この数週間私が体験した刑事事件の処理を取り上げてみましょう。
 もちろん、ビジネス系の話も大変な時期なので、色々あるのですが、通常、動きの必要な刑事事件はどのような対応が行われているのか私も興味があったところです。

 私が現在、無罪を争っている大型の刑事事件があるのですが、拘置所に入れられている被告人は元々結核を子供のときに患っていて、現在も様々な既往症が認められます。

 いったん、拘置所にコロナウイルスが蔓延してしまうと、治療も不安ですし、そもそも無罪を争っていて、私も無罪を確信している事件ですから、ウイルスの影響が本人にあると、トライアルまで耐えられるのか疑問になってしまいます。そして、公に危険が生じるような性格を持っている被告人ではありません。交通切符も一回ももらったことのない真面目な人です。

 そこで、コロナウイルスの問題で、一時的な釈放を申請してみようということになりました。
連邦の事件なので、争ってきているのは連邦司法省です。そして、かなり厳しい判断を下す裁判官が担当です。

 アメリカ全体でも、実際拘置所の公衆衛生が問題になってきており、少しは裁判官も聞いてくれるのかな、とあまり期待せずに戦っていました。自宅待機中で弁護士も裁判所にいけません。申請書には「電話、またはビデオ出廷をリクエスト」と書いておきました。

 司法省側の反論についての再反論を整えていたところ、電話などの出廷も飛び越えて私の主張が認められ、いったん被告人が拘置所から出してもらえる決定を勝ち取ることができました。とても嬉しいことなのですが、一方で、自宅待機をしていることから、法廷で色々弁論もできなかったことは、なんだか法廷弁護士としては気持ちが悪いというか。

 別の事件では、日本の公的機関から紹介されたという日本人から、逮捕勾留されているので緊急で助けてほしいと事務所に連絡がありました。

 事務所の人達も出勤するわけにいかず、遠隔操作での伝言での連絡です。私も遠隔操作で、サンフランシスコの拘置所と検察に連絡を取ると、まだ保釈金も設定されておらず、勾留されていました。電話では直接被疑者と話ができません。しかし、この緊急時、弁護士もノコノコ拘置所にいくのも躊躇します。

 拘置所の人たちと話をすると、なんと、インターネットのビデオ通話で、接見ができるというではないですか。そこで早速申し込みをしてみると、翌日早速設定がされ、ビデオで話すことができました。ただ、スーツは自宅で着ませんから、普段着は映ってしまいましたね。直接ビデオで話ができるということは勾留されている人にとっても、弁護士にとってもとても便利でしたし、単なる電話よりも充実した相談タイムでありました。身振り手振り、そして、図などもやり取りできます。かなり非常時対策がちゃんとしていて、検察・警察も事件を進めるために、協力をしてくれていると感じました。
こういったフェアな精神がアメリカの素晴らしいところだと思いました。

 いっその事、これからビデオ接見も普通に許してくれると、被疑者も弁護士もかなり助かるな、と感じました。本件の事情を聞くと、DV事件でした。どうも、彼氏も彼女もコロナで生活が異常になり、口論が絶えなくなったこともあったようです。
一般的にもDV事件が増えているようですが、精神的な影響もあるのかもしれません。

 本件では事情を聞いてみると、暴力事件とは言えないような案件でした。
 関係各所に連絡をしたところ、その日の夜には釈放され、事件化には至りませんでした。このような釈放の説得なども結局電話だけで対応できたのは、いつも動いている私には少々気持ちが複雑でしたが、まずは良かったですが。

 このように、書面だけをいじって、そして考える作業だけではなく、刑事事件でもそれなりに遠隔操作ができるということを実感できる数週間になりました。新しいことを習うのは楽しいですね。ただ、やはりどんなにテクノロジーが進化しても、実際の法廷や、実際の相談、そして実際の交渉などは、電話やビデオでは本当は代替えできないのではないかな、とも思わされました。

 大変な時期が続きますが、また一週間各自自宅待機をして、コロナの死滅を願いましょう。



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Golden Gate sanfran

カリフォルニア州弁護士コラム_「短パン」_1160

法律ノート 第1160回 弁護士 鈴木淳司
May 16, 2019

 今回は、前回から続けて考えている「パワハラ」に関する質問にお答えするのを一回休ませていただき、最近わたしの「やっちゃった」体験を自分の教訓にもなるように文字にさせてください。

カリフォルニア州弁護士コラム―「短パン」_1160

 一般的に、弁護士の服装というとダークスーツに大きな革の鞄。日本でもアメリカでもドラマではお決まりの姿で、それなりに格好良いわけです。ときどき蝶ネクタイをはめている弁護士もいますが、私はフライドチキンを連想してしまいます。実際に事件は事実で動いているので、弁護士のカッコがどうであれ、結果に影響するものではありません。裁判官の立場で事件をみていても弁護士の姿で事件に影響はしません。

 ただ、やはり法廷などの場では、私もスーツを着ます。印象というのもある程度考慮しなければならないのでエチケットですね。以前法律ノートにも書きましたが、あるベイエリアの裁判官に「ネクタイを忘れた弁護士と話をしない」と言われたことがあります。その人はネクタイ以外のことでも変人扱いされていましたし、法律にネクタイ着用義務というのは書かれていません。友人の弁護士にネクタイを借り、乗り切った覚えがあります。このような経験もあり、くだらないことで、争ってもしょうがないので、やはり法廷ではスーツにネクタイをするようにしています。

スーツ姿だと浮いてしまう拘置所や刑務所

 法廷の外では、スーツなど「着てられない」という場合もあります。刑事事件にかかわると拘置所や刑務所に行くときがその例です。刑事事件では、判決が出る前の未決の人達、判決が出たあとの既決の人達に会うことがあります。接見、とか面会などと言います。

 日本では信じられないかもしれませんが、アメリカでは拘置所や刑務所がとんでもないところにある場合があります。私もアリゾナで接見をしたときに、火星に来たのではないか、といった赤い岩山に囲まれた都市から3時間弱離れたところに行った経験もあります。そういったところスーツで出向くと一人だけ浮いているような場合もあります。もちろん、初対面の人に会う場合、会う方も、スーツ姿の弁護士を期待するでしょうが、気の知れた人との面会は私服で行くことも少なくありません。

暑い日に砂漠のなかの拘置所を訪問

 最近砂漠のなかの、都市部から1時間半ほど離れた周りになにもない拘置所に訪問することになったときのお話です。もう、春とはいえない暑さで、街では、サンダル履きの人達が多く、タンクトップも違和感がない気候です。ご家族の方に運転をしてもらい、本当に何もない砂漠を車で走ります。もう、数度目の接見であります。拘置所の人達とも会話が弾むようになりました。私の服装に潜在的な問題があったのですが、すっかり忘れていました。車は拘置所に着きます。

 日本は、○○禁止が大好物の国で、高速道路でも「○○するな」、街なかでも「○○するのはやめましょう」とどこにいっても行為の禁止を促されますし、それが日本の常識であります。

 アメリカでも、拘置所や刑務所に行く場合、ローカルルールもあるのですが、服装について「禁止」条項があります。一般の訪問者についても、服装は注意され、肩出しがダメ、とか足の指が見えるサンダルはダメ、などと書かれています。アメリカでは実質的な理由があるのでしょうが、これが一般的です。20年前よりも厳しくなってきているので、この20年で色々なトラブルがあったのかもしれません。

 私は以前、ある弁護士に頼まれて暑い夏の日にカリフォルニアの田舎にある刑務所の受刑者に会いに行ったのですが、服装を考えずに、ビーチサンダルでの面会を断られました。そのときは、自分の車だったので、即座に車に戻って、ゴルフシューズを見つけて、事なきを得ました。

短パン禁止と知らずに拘置所の中へ

 今回、私が失敗したのは、短パンです。その拘置所は砂漠のど真ん中にあり、太陽がカンカン照りなのですが、短パンは禁止というのを、何度か鉄錠門をくぐったあとに知らされました。これは困りました。携帯電話も禁止なので、運転をしていただいている方に、拘置所の電話を借りて連絡し、戻ってきてもらいました。拘置所の人に聞いた、数マイル離れたスーパーに行き、作業ズボンを買いなんとか接見ができました。本当に周りに店がなかったらアウトでした。

 どんな暑い日でも、短パン、サンダル肩出しはダメなので、これから車に積んでおかなければならないなぁ、などと思いつつ反省しきりでした。

 次回は「パワハラ」の質問をもう一度考えていきたいと思います。

ベイエリアは暴風のようですが、私は砂漠で水分不足と戦っています。健康に留意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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