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法律ノート 第998回 弁護士 鈴木淳司
March 13,2016
将棋の某プロ棋士と酒を呑みながらの会話で、将棋もなかなかソフトには勝てない時代になってきたという話になりました。最近になって、囲碁も人間が負けたということです。人工知能の開発が進み、人間の仕事をどんどん代替していくことになるのでしょうか。ただ、将棋の棋譜にも 「美しさ」といった主観的な部分があります。絵画とか、書道とかにも、人間の主観的な感情が 入りますね。小説でも、そして弁護士の担当する法廷でもドラマがあります。こういった人間の 感情的な部分というのは、一体どのように人工知能によって表現されていくのか興味があります。
シリコンバレーで事業を始めるためのプランニング[3]
さて、前回から続けてお答えしている、
「(現在日本にいる)インターネット系ベンチャー企業を数名ではじめた一人です。日本では企業として活動しているのですが、今後世界展開をすることを視野に、できれば将来はシリコンバレーに会社を設立して、アメリカ事業を展開したいと思っています。
いろいろ情報を集めているのですが、まずどのようなことをしなければいけないのかよく理解していません。イメージをしてから具体的なプランニングをしたいと思っています。」という質問を考えていきましょう。
まずはアメリカでのプレゼンスを作る
前回は、子会社をいきなりつくらないで、事業を拡大することを考えてみるというところで終わりました。ここから続けて考えます。
子会社をいきなりつくらなくても、インターネット系のサービスはいわゆる契約社員的な人達を 雇って、サービスの拡大や現地での認知を高める活動を数ヶ月行ってみるということができます。インターネットにさえ接続できれば、サービス内容を見ることもできますし、どのように現地で 受け入れられるのかアメリカで試してみるということが一つの方法です。
他国での開発から事業を拡大
そして、現地で必要な人員も理解できてくると思います。たぶん、インターネット系のローカライゼーションは別に米国に人を雇わなくてもある程度できる可能性もありますし、高騰するベイエリアの人件費を考えると、他の国でできることはやる、という選択も必要だと思います。
実際に、米国の会社でも、他国で開発のほとんどを行うということもかなり行われています。
このような基本的な調査を数ヶ月は行い、そのうえで現地にある会社を買収することもあるでしょうし、現地に営業所のみを開くということも考えられます。
また子会社を設立することもありえるでしょう。同時に、日本から人を送り込むことを視野に入れている場合には、ビザの問題なども発生すると思います。
子会社の法人格:株式会社かLLCか
子会社を設立する際に、多くの方々は株式会社(Corporation)にするのか、LLC(Limited
Liability Company有限責任法人)にするのか、ということで悩まれるようです。
私も何度となくこういった企業の相談に乗ってきました。色々なネット情報を集め、いろいろな 専門家の話を聞かれているようです。
法律事務所でも、かなり難しいことを説明しながら、両者のメリット・デメリットについて解説しているところもありますが、私が読んでもよく判断の基準がわからず、結局自分で決めろ、と言っているものがほとんどです。
株式会社を勧める理由
この2つの法人格は、ほぼ類似していますし、税法においても法人として申告する方法を取れば似たり寄ったりです。ですので、究極的な結論としては、どちらでも良いと思います。
しかし、私は伝統的な株式会社をお勧めしています。理由は至極簡単で、日本からアメリカに進出をされる企業であれば、ある程度日本の株式会社法を理解されているでしょうし、その会社を取り巻く人達も株式会社や株式という概念については理解されていると思います。
アメリカ法の影響を多く受けて改正された株式会社法を見れば、日本の法律しかしらない弁護士でも、ある程度、目星はつけられるはずなのです。
経験上理解しやすい法人格を選ぶ
かりにLLCを選ぼうとした場合、進出企業内でも、よく内容を理解しなければなりませんが、その企業を取り巻く人達にもLLCが何なのかよく説明しなければなりません。
株式であれば、一株の価値が決められますし、何株あれば、どのような持ち分なのかなどがどこの国でも共通でわかります。
このような基礎的に理解しやすい法人を選ぶ方が、運営も楽ですし、色々な投資判断をする上でも話が通じやすいのです。似たり寄ったりの法人格なのですから、自分の経験上わかりやすい方を選んだ方が良いと私は思っています。
ですので、アメリカで株式会社を設立しようと思ったら、基本的には現在日本で施行されている会社法を見て、ある程度基礎的な内容をプランニングしておけば、アメリカでもほぼ同様の内容で設立することは可能と思っておけば良いと思います。
税務申告:連邦税と収税
外国会社(日本企業)としてアメリカの各州で登録しても、子会社をつくっても、税務申告が 必要になるのが原則です。そうすると、税務申告について、アメリカは連邦税と州税といって、 日本でいう国税と地方税的な違いがあります。
州税は州が決められるので、たとえばネバダ州やデラウェア州は基本的に法人税を課しませんが、カリフォルニア州では最低で約年間800ドル以上かかるといった違いが生じています。
ただ、実際にカリフォルニア州にオフィスがあれば、結局デラウェア州の会社でもカリフォルニア州税も支払わなくてはいけないので、基本的にどこの州に自分のオフィスを置くのか、どの州で 実質的な活動をするのかを決めてから、子会社を設立すれば良いと思います。
実質的なビジネスをどこでするかは、上記で考えた最初の段階のリサーチで結論を出せば良いと 思います。
ここまで、多岐にわたって色々考えましたが、今回の質問にお答えしたような内容をすべて網羅できてれば、準備としては充分と思います。ここまで考えればあとは自分のつくったビジネスプランに基いて、運営していくということになるのだと思います。
また、次回新しくいただいている質問を考えていきましょう。エル・ニーニョでかなり雨の日が多いベイエリアですが、合間の清々しい晴れ間を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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