コンサルタントのアドバイスミス、責任は?[2]

法律ノート 第1023回 弁護士 鈴木淳司
September 06, 2016
 
レーバーデーで三連休でした。一年のなかで9月が平均的に一番暑いサンフランシスコ・ベイエリアは良い天気に恵まれ、私もゴルフで気分転換ができました。また、法廷が多い仕事に就いているので、通常、私は日本人関係の「会」や「グループ」には利益相反が生じる可能性から顔を出さないのですが、近年亡くなったある方が、生前私に何度もある会に所属するように誘ってくださりました。葬式にも顔をだせず悔しい思いをしましたが、義理を重んじる私は、その方の遺言だと思い、そのベイエリアの会に所属することに決め、昼間からワインとおしゃべりを楽しんできました。皆さんはいかがお過ごしになりましたか。
 
コンサルタントのアドバイスミス、責任は?[2]
 
前回から考えて「日系企業で法務に携わる者です。当社では、いわゆる労務関係やビジネスに関してアドバイスをするコンサルタントと契約をしています。近時、社内の従業員から就労環境についてハラスメントがあるのではないか、という苦情がでてきたので、このコンサルタントのアドバイスを元に対応していたところ、いわゆる、差別的な取扱があったということで訴訟に発展しました。当社としては現地の事情に詳しいということで、このコンサルタントを頼っていたのですが、どうも、アドバイスにミスがあったということがようやくわかりました。こういった場合、コンサルタントの責任を追及することが可能でしょうか。」
 
コンサルタント契約ー雇用ではないー
 
前回は、今回考えている質問の前提として、一体コンサルタントとのコンサルティング契約とはなんぞや、ということを考えました。請負や準委任的な契約であり、雇用ではないということになります。
請負と雇用の間にはかなりの法律的な違いがあるのですが、今回の法律ノートでは、請負の方が雇用より独立した関係であり、コンサルタント側がかなり仕事をするうえで、裁量の幅が広い立場にあるという感覚を理解してください。
また、コンサルタントというのは、別途国家資格などを持っていない限り、自己の経験などを基礎とし、アドバイス提供する対価金銭を得る人を言いますので、そのアドバイスの責任はそのコンサルタントのみにあることになります。
もちろん弁護士の資格もないのに、労働法や移民法などの法律的なアドバイスを行っている場合には、非弁行為といい、今回質問されている方が、無資格者の法律的なアドバイスに基づいて行動し、法律的な責任を負うことになった場合には、場合によっては、非弁行為として不法行為責任を問えるかもしれません。これは、比較的簡単な責任追及方法になると思います。
 
契約条項を一つ一つ吟味する
次に、コンサルタントとの契約にどのような条項があるのか、特にコンサルタントの義務にはどのようなものがあるのか、契約をよく読んで吟味しなければなりません。
これは個々の契約書に記載されている内容によりますので、具体的にどのようなコンサルタント契約を締結されているのか、その内容を確認してみないと正確な回答をすることができません。
しかし、コンサルタント契約には、どのようなことを、どのようにアドバイスするのか記載がありますので、今回質問されている方は、まず契約書にコンサルタントが何をしなければならないのか、そして、どの部分に反する可能性があるのかを考えなければなりません。
 
事例に当てはめて考えてみる
たとえば、今回質問の対象となっているコンサルタントが「労働関係上のハラスメント対応」を業務内容に挙げていた場合、2つの問題が生じる可能性があります。
まずは、弁護士の資格もないのに法律のアドバイスをしていた場合です。医師免許がないのに、手術をすることに似ています。これはアウトです。
ふたつ目に、これも法律的には怪しいのですが、ハラスメント関係について事実的なアドバイスを与える、というコンサルタントがいますが、これもたとえば事実的に、「あれしろ、これやれ」という事実的な対応であれば問題はないのですが、事実的なことを超え、存在する事実を法的に評価するようになると、法律のアドバイスとなり合法的なアドバイスとは言えないと思います。
できれば、今回のようなコンサルタント業務は、労働法を良く知っている弁護士に聞いた方が良かったように思います。
以前、ある訴訟で、労働コンサルタントと称す人の訴訟に関わったことがありますが、訴訟になったとたん、その労働コンサルタントは、実は弁護士に相談していた、と弁護士に責任転嫁していて、戦禍が拡大していきました。それなら、最初から弁護士に相談すりゃ良いのにと思ったものです。
以上で、大体今回の質問を考えたと思います。わざと、少し歯切れが悪く書いてあるところもありますが、どうかご容赦ください。
次回からまた新しい質問を考えていきましょう。
今週、ベイエリアはかなり暖かくなりそうです。皆さんのお住まいの地域はいかがでしょうか。夏であろうと、秋であろうと、太陽を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。

作成者: jinkencom

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