法律ノート 第1032回 弁護士 鈴木淳司
November 06, 2016
数日前、車に乗って事務所に向かっていました。かなり天気が良いので、運転席側の窓を空けたたまにしておきました。信号で止まっていたのですが、隣の車から、大きなSUVの運転手が、タバコを片手にもくもくした車内から、私に大声で話しかけてきました。道を聞くのではなく、「Do you Speak Italiano?」と聞かれて、Noと言いましたがイタリア語で道を聞きたかったのでしょうね。しかし日本人の顔をしている人に、イタリア語って聞かれてもなぁ、と苦笑いしてしまいました。夏時間も終わりましたね。皆さん、お元気にされていますか。
自宅を改装中。追加支払いの要求に応じるべき?[2]
さて、前回から考えてきた、「自宅の改装をコントラクターに頼んでいます。自宅の一部を改装するために、コントラクターに仕事を頼んでいます。契約に基づいてすでにお金は一部払っています。まだ、改装の途中なのですが、時間がかかっていることと、コントラクターがお金を必要としているということで、追加の支払を求められています。私としては中途で仕事を投げ出されるのは怖いのですが、支払うことも躊躇しています。どのように対応していくべきなのでしょうか。」という質問を続けて考えていきましょう。
原則、頭金支払は全体の10%まで
前回は、最初から契約書で、契約内容を明らかにして、全工事過程でかかる10%までの支払は頭金として設定することができることを理解していただけたと思います。ただし、一定の要件を備えたコントラクターは、10%を超えて、頭金を設定できる場合があります。たとえば、パフォーマンスボンドという保証引当制度に加入している場合です。もし、例外を主張された場合には、その例外が本当に存在し、例外にあてはまるのか、Contractors State License Boardに確認をしたら良いと思います。
追加の費用支払、そのタイミングと方法
今回質問されている方が実際に法律相談に来られたら、まず契約書を見せてください、ということになります。契約書の内容を確認し、どの工程が終わったらいくら支払がなされるのか、記載をよく見ます。かりに、今回支払の条件となっている部分が終わっていなかったら、一刻もはやく改装を終えるようにしてもらい、追加の金額は絶対に払わないようにアドバイスします。かりにお金を払っても、結局仕事をしない可能性も高いです。
それから、支払うときは、キャッシュを求めてくるコントラクターもいますが、必ずチェックなどで、日付がわかるような形で支払をするようにしてください。契約書に沿って支払がなされたかどうか、など明確になるからです。
それから、先にお金を払ってしまって、プロジェクトが進行しない場合には、元請けの業者から業務を下請けしている、いわゆる下請業者が、支払を求めて、元請業者を飛び越えて、工作物である家に対して、先取特権(Mechanical Lien)を行使してくることが事件化することがあります。
先取特権は、難しい法律問題を含むので今回は割愛しますが、要するに、仕事が終わっていないのに元請業者にお金を払ってしまうと、元請業者と下請業者の間のトラブルに、今回の質問をしている方のような注文者の方も巻き込まれてしまう可能性が出てくるということです。
コントラクターの「人となり」も大切
このように、「料金先払」をすると、潜在的に問題になりそうなことがありますので、できれば、しっかり、支払は管理しなければなりません。私の経験では、今回質問されている方のように、コントラクターが仕事をしない、という問題が発生するとき、コントラクターがアルコールにハマってしまっているとか、ギャンブルにハマっているとか、家庭の問題があるとか、とにかく自分に問題がある場合が多いです。ですので、もちろん人のプライバシーにくびを突っ込むのは良くないですが、仕事を時間以内に終わらせるために、ある程度、その人が仕事に厳しい人であるかを聞いたり、リファレンスをもらったりすることも、トラブル回避には重要だと思います。
納期の遅れ、まずは契約に沿って率直に話し合う
また、あまりにも納期が遅れるなどの事情がある場合には、セカンドオピニオンをもらい必要であれば、コントラクターを変えるということも考えなければならないと思います。ただ、コントラクターを変えるとまた、お金をかなり取られてしまうなどの弊害はあるかもしれません。まずは、よく実際に仕事に着手をしているコントラクターと契約書に沿って話をすることが第一だと思います。
次回新しくいただいている質問をまた、みなさんと一緒に考えていきましょう。
11月だというのに、まだベイエリアは温かいです。それでも、風邪が流行っているようですので、体調管理には気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。