法律ノート 第1543回 弁護士 鈴木淳司
September 26, 2026
もう、野球シーズンが終わります。サンフランシスコは新しい監督のもと、散々な結果でした。なんかチームが有機的につながっていない感じを受けますし、良いところがあっても、うまくそれを活かせない、といったところでしょうか。来年はどのようなシーズンになるかわかりませんが、もうサンフランシスコ・ベイエリアは野球よりも、フットボールにシフトしはじめていますね。
さて、前回から考えている質問を今回続けて考えていきましょう。いただいている質問をまとめると「カリフォルニア州に学生のときに住んでいました。現在は日本で外資系(米系)の会社で働いています。当時、学生のときに駐車違反を数度した覚えがあります。そのときに罰金を払ったか、払わなかったか覚えていないのですが、今度アメリカに行くときに、問題になり得る可能性はありますか。現在、犯罪歴があるとアメリカに入れないケースが増えていると聞いて不安になりました。何度か大学近くの警察にメールをしたのですが、返信が一切ありません」というものでした。今回も引き続き考えていきたいと思います。
前回は、カリフォルニア州では駐車違反が刑事罰の対象から外され、民事上の制裁金として処理されていること、したがって移民法上の「犯罪歴」にはあたらないことを整理しました。今回は、払ったかどうか覚えていない制裁金がどうなっているのかを考えます。
まず、制裁金を払わずに放置すると延滞金(Late Penalty)が加算され、当初の数倍になっていることも珍しくありません。そして、州車両法4760条により、未納の駐車違反があると、州の陸運局(DMV)はその車両の登録更新を拒むことができます。つまり、未納の制裁金は「人」ではなく「車」にひもづけて管理されるのが基本なのです。このほか、処理機関が債権回収業者に回収を委託したり、州税務当局(Franchise Tax Board)の相殺制度を使って州税の還付金などから差し引いたりすることもあります。
逆にいえば、駐車違反の未納だけを理由に逮捕状(Warrant)が出る、ということは、カリフォルニア州の制度上は通常ありません。空港で税関国境保護局(CBP)の入国審査官が照会する犯罪記録のデータベースには、連邦捜査局(FBI)が管理する全米犯罪情報センター(NCIC)などがありますが、市や大学の駐車違反の未納記録がここに登録されることは基本的にないのです。ただし、帰国の際に車を売却していても、陸運局へ譲渡通知(Notice of Transfer and Release of Liability)を出していなかった場合、その後に買主が切られたチケットまで、登録名義人である質問者の方の名前で残っている可能性はあります。これも犯罪歴ではありませんが、気持ちの良いものではないですよね。
注意が必要なのは、「駐車違反」だと記憶しているものの中に、走行中の違反が混じっていた場合です。スピード違反などで警察官に止められ、チケットに署名した場合、その署名は出頭の約束(Written Promise to Appear)を意味します。これを無視して出頭しなかった場合、州車両法40508条により、故意の不出頭はそれ自体が軽罪(Misdemeanor)となり、裁判所が逮捕状(Bench Warrant)を発付することがあります。こうなると話は別で、逮捕状が出ていれば入国審査の際の照会で判明する可能性がありますし、運転免許の停止処分にもつながります。学生時代の記憶は曖昧なことが多いので、「全部駐車違反だった」と言い切れるかどうか、一度落ち着いて思い出してみてください。
では、どうやって確認すればよいのでしょうか。駐車違反であれば、当時の市や大学の処理機関のウェブサイトで、ナンバープレート又はチケット番号から未納の有無を検索できることが多いです。警察にメールをするよりも、こちらのほうがずっと早いと思います。走行中の違反であれば、違反地を管轄する郡の上位裁判所(Superior Court)の交通部の記録を確認することになります。カリフォルニア州では、刑法977条により、軽罪や違警罪の多くについて弁護士が本人に代わって出頭できますので、日本にいながら処理することも可能です。
次回は、最近の移民法の動きを踏まえて、ESTAの申請や入国審査の際に気をつけるべき点を考えていきたいと思います。
朝晩が涼しくなってきました。また一週間がんばっていきましょうね。
このシリーズを読む
- 第1回(本記事):過去の交通違反とアメリカ再入国(1)_1542
関連する米国法律リソース
- カリフォルニア州車両法40200条(駐車違反を民事制裁金とする規定)Cal. Veh. Code §40200
- カリフォルニア州車両法22350条(基本速度法・走行中の違反=違警罪)Cal. Veh. Code §22350
- 移民国籍法212条(a)(2)(犯罪を理由とする入国拒否事由)INA §212(a)(2) / 8 U.S.C. §1182
- 移民国籍法101条(a)(48)(A)(「有罪判決(Conviction)」の定義)INA §101(a)(48)(A) / 8 U.S.C. §1101
免責事項
本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の個別案件に対する法的助言ではありません。記載内容は執筆時点(2026年9月)の情報に基づいており、法律や規制は変更される可能性があります。
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