法律ノート 第1545回 弁護士 鈴木淳司
Oct 10, 2026
最近、とある牛肉に特化した専門店で肉を買ってみたら、衝撃を受けるくらい通常量販店で買っている肉と旨味が違いました。日米を問わず、たとえば、魚屋さん、肉屋さん、お米屋さん、パン屋さんといった専門店がなくなって、大型スーパー化していますが、以前の業態に回帰しているのでしょうか。
大型スーパーで買い物を済ませるのではなく、こだわっているお店をチェックしたほうが良いのだな、とつくづく感じました。
通知はRFEでも犯罪歴の発見でもない
さて、ここ数週間、私の所属する事務所が扱っている移民関連の事件において、移民局(USCIS)から同じ体裁の一枚紙が続けて届くようになりました。
表題は「FBI Privacy Requirements for Biometrics Collection by USCIS」。申請人ご本人にも同じものが届いており、「何か問題が見つかったのでしょうか」というお問い合わせが相次いでいます。そこで今回は、読者の皆さんからの質問をお休みして、この通知が何なのか、そしてなぜ今になって届くのかを、一緒に考えてみたいと思います。文面は末尾に掲げておきます。
この通知は追加証拠提出要求(Request for Evidence・RFE)でも面接通知でもなく、何らかの犯罪歴が見つかったことを意味するものでもありません。文面にも、現時点で対応は不要である旨が太字で明記されています。代理人の弁護士宛にも届くのは、G-28(代理人届)を提出している案件では、申請人宛の通知の写しが代理人にも送付されるためです。
通知の根拠-FBI記録照会とプライバシー権
では、何を知らせているのか。
合衆国法典第28編534条に基づいてFBIの犯罪歴記録を照会する機関は、連邦規則集第28編50.12条により、指紋がFBIの犯罪歴照会に用いられることを本人に告知し、記録を補完又は訂正する機会を与えなければなりません。
通知に列挙された告知(Notification)、閲覧(Access and Review)、訂正(Correction)、使用及び共有(Use and Sharing)の四つの権利は、この非刑事司法目的で用いられる情報のプライバシー権(Noncriminal Justice Applicant’s Privacy Rights)を言い換えたものです。
一回限りの照会から「継続的移民審査」へ
注目すべきは冒頭の一文です。
移民局は2017年以降、特定時点での審査(Point-in-Time Screening)から、申請や米国入国を契機とする「継続的」移民審査(Continuous Immigration Vetting・CIV)へ移行してきた、と述べています。従来の身元審査は、バイオメトリクス予約で採取した指紋をFBIに照会し、結果を得て終わる一回限りのものでした。
これに対しFBIには、ラップバック(Rap Back)と呼ばれる仕組みがあります。
非刑事目的で採取した指紋を次世代識別システム(Next Generation Identification・NGI)に保存し続け、その後に逮捕等の記録が登録されれば、照会元の機関に自動的に通知するというものです。
FBIのプライバシー影響評価(Privacy Impact Assessment)は、登録対象者に50.12条の告知を行うこと、すでに指紋が保存されている者にも告知を届ける手当てをすることを求めています。数か月前に指紋を採った申請人に一斉に通知が届いているのは、この要請に沿った動きと考えられます。
継続審査を後押しする最近の政策の流れ
背景には、ここ一年ほどの政策の流れがあります。
2025年11月、国土安全保障省(DHS)は、年齢を問わない生体情報の採取と、市民権取得に至るまでの継続審査(Continuous Vetting)を規則上明記する規則案(Notice of Proposed Rulemaking)を公表しました。もっとも、これはまだ最終規則(Final Rule)になっていません。
続いて2026年2月の大統領令14385号は、司法長官に対し、国土安全保障省が審査目的で司法省保有の犯罪歴記録(Criminal History Record Information)に法の許す最大限の範囲でアクセスできるよう求めました。
移民局自身も3月30日付の告知で、生体情報の一致や新たな犯罪情報を自動的に受け取るためのシステム連携を整備中であると明らかにしています。9月の一斉送付は、その連携が現実に動き出したことを示すもの、と私は見ています。
実務上の意味は明らかです。申請が承認された後も、市民権を取得するまで記録の確認は終わらない。永住権取得後の逮捕であっても、次の申請を待たずに移民局に把握されうる、ということです。
通知を受け取った方が今できること
では、何をすべきか。通知そのものに返信する必要はありません。ただ、不安に思われる方は、この機会に、同編16.32条に基づいてご自身のFBI記録(Identity History Summary)を取り寄せておくことをお勧めします。
逮捕の記録だけが残り、その後の不起訴や棄却といった最終処分(Disposition)が反映されていない例は珍しくありません。その場合は裁判所の処分証明を取得し、16.34条の手続で訂正を求めておくべきです。
また、移民局の申請書は、有罪判決だけでなく逮捕歴そのものを尋ねています。記録が抹消(Expungement)された事件でも移民法上は有罪判決として扱われうるうえ、当局が把握しうる事実を申告しなかったことが、虚偽表示(Misrepresentation)という、はるかに重い問題を招きます。なにか移民局に、一度照会すれば終わり、という時代の感覚は、もう通用しないことになります。
ビザ保持者でも、永住権保持者であっても、常時、逮捕や有罪となれば、移民局に通報がいくということが明確になったわけです。
不法滞在・不法就労はFBIとは別の仕組みで把握される
なお、犯罪者に関しては、FBIの記録に移民局は頼りますが、一方で、不法滞在・不法就労については移民局そのものが常時監視をしています。
最近でもICEに逮捕されている外国人の多くが、「ビザの期限切れ」の違法滞在者です。
ビザで許された滞在期間が切れてしまってもアメリカ国内にいると、米国に滞在しながら、合法な資格に切り替えられないので、一度国外に出る必要があるのですが、そのまま違法に滞在を続けている外国人は、移民局そのものが記録を常時把握していることになります。
また、不法就労についても、I-9の義務厳格化などを含め、移民局は取り締まりを強化しています。この違法滞在・不法就労は、FBIは直接関係ありません。
日が短くなり、夕方の冷え込みが急に増してきました。今年はインフルエンザが東海岸ではなく、西海岸でも時期も繰り上がって流行るようです。予防接種も早めに受けておいたほうが良いですかね。また一週間がんばっていきましょうね。
【参考】通知文面(抜粋)
U.S. Department of Homeland Security
U.S. Citizenship and Immigration Services
Camp Springs, MD 20588
関連する米国法律リソース
- 移民局:審査・身元確認の強化に関する告知(2026年3月30日、6月更新)Update on USCIS’ Strengthened Screening and Vetting
- FBI:非刑事司法目的の申請者のプライバシー権 Noncriminal Justice Applicant’s Privacy Rights
- FBI:指紋の利用に関するプライバシー法上の告知 Privacy Act Statement
- FBI:本人のFBI記録の取寄せ Identity History Summary Checks
- 合衆国法典第28編534条(犯罪歴記録の取得・保存・交換)28 U.S.C. §534
- 連邦規則集第28編50.12条(指紋照会時の告知義務)28 C.F.R. §50.12
- 連邦規則集第28編16.30〜16.34条(本人記録の取寄せと訂正)28 C.F.R. §§16.30-16.34
- 官報:大統領令14385号(2026年2月11日掲載)Executive Order 14385
- 官報:生体情報の収集と利用に関する規則案(2025年11月3日)Collection and Use of Biometrics by USCIS (Proposed Rule)
免責事項
本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の個別案件に対する法的助言ではありません。記載内容は執筆時点(2026年10月)の情報に基づいており、法律や規制は変更される可能性があります。
本記事の内容に基づいて行動される場合は、必ず専門の弁護士にご相談のうえ、個別の状況に応じた適切な法的助言を受けてください。本記事を読まれたことにより、JINKEN.COMまたは執筆者との間に弁護士・依頼人関係が成立するものではありません。
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【事務局注】
本記事で触れた国土安全保障省の生体情報に関する規則案(2025年11月公表)は、2026年10月時点で最終規則としては施行されていません。「FBI Privacy Requirements for Biometrics Collection by USCIS」の通知が届いた場合でも、別途の通知がない限り、返信や書類の提出は不要です。最新の情報は移民局(USCIS)の公式サイトでご確認ください。
関連記事
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