国際結婚と相続-アメリカから日本の甥姪に相続させたい(1)_1533

法律ノート 第1533回 弁護士 鈴木淳司
July 19, 2026

もう、この原稿を書く週末でワールドカップが終わってしまいます。放映時間が平日の中途半端な時間の試合が多く、なかなか観れなかったりもしましたが、ダイジェストをみたりして、かなり追っていました。楽しかったです。皆さんも楽しまれましたか。ただ、アメリカでは本当にサッカーが不人気なんだな、と思わされます。量販店に行くと、FIFAのグッズやサッカーのグッズがもう半値になって売っています。一方で、今回のサッカー大会がきっかけで、学校などではサッカーが盛り上がってきているようです。

チームスポーツは色々ありますが、どれも特色があり面白いですね。


さて今回から皆さんからいただいている質問を新たに考えていきたいと思います。

いただいている質問をまとめると「私は日本から移住してきて、アメリカ人の夫と30年ほど一緒に住んでいました。子はいません。一昨年夫が病気でなくなりました。友人はたくさんおりますが、私の家族はアメリカにはおりません。妹が日本におり、甥っ子、姪っ子の2人がいます。将来は私も日本に戻ることも考えていますが、現在日本に住んでいる妹の子ども二人に財産を相続させたいと思っています。財産は家と銀行口座の預金です」というものです。

ご質問ありがとうございます。

日本とアメリカにまたがる、いわゆる国際相続のご質問です。相続と一口にいっても、日本とアメリカでは法制度の仕組みが根本的に異なります。

国際結婚をされてアメリカに長くお住まいの日本人の方には、同じような状況におられる方が多いと思いますので、今回から数回に分けて、カリフォルニア州の相続制度を整理しながら、質問者さんのご希望を実現する方法を考えていきたいと思います。

亡くなったご主人の相続手続は完了している?

まず前提として確認していただきたいのは、亡くなられたご主人の相続手続が完了しているか、という点です。

カリフォルニア州は夫婦共有財産制を採用している州で、婚姻中に夫婦が築いた財産は、原則として夫婦の共有財産となります。

ご主人が亡くなられた際に、遺言(Will)やトラスト(Trust・信託)が存在したのか、あるいは配偶者のための簡易な移転手続(Spousal Property Petition)を利用されたのかによって経緯は異なりますが、いずれにしても、ご自宅の権原(Title)と銀行口座の名義が、現在、質問者さんの単独名義にきちんと変更されているかどうかを、まず確認してください。

名義の整理が済んでいないと、次の世代への承継を考える前提が整わないからです。

その上で、もし質問者さんが何の対策もしないまま亡くなられた場合にどうなるか、を考えてみましょう。

何も対策しないと財産は妹さんに-無遺言相続の順位

遺言もトラストも残さずに亡くなってしまった場合、カリフォルニア州相続法の定める無遺言相続(Intestate Succession)の順位に従って、法定相続人(Heirs)が財産を相続することになります。

今回、質問されている方のように、配偶者に先立たれ、お子さんもいらっしゃらない場合には、まずご自身のご両親が相続人となり、ご両親がすでに亡くなられていれば兄弟姉妹が相続する、という順序になります。

つまり、現状をみると、日本におられる妹さんが法定相続人となるのであって、甥御さんと姪御さんは、妹さんが質問者さんより先に亡くなられた場合にのみ、妹さんの地位に代わって(代襲して)相続する立場にとどまるのです。

甥・姪へ承継させるにはエステートプランニングが必要

ここで大切なのは、質問者さんのご希望が「妹の子ども二人に相続させたい」という点にあることです。

無遺言相続の法定の順位に委ねてしまうと、財産はまず妹さんに帰属しますから、このご希望はそのままでは実現しません。

ご希望どおりに甥御さんと姪御さんへ財産を承継させるためには、遺言またはトラストによって、生前に承継先を明確に指定しておくこと、すなわち、遺言やトラストを使ったエステートプランニング(Estate Planning・遺産計画)を、生前に整えておく必要があるということになります。

もう一つの壁-プロベート(検認手続)

さらに、カリフォルニア州で財産を残す際に配慮しなければならないのが、プロベート(Probate・検認手続)と呼ばれる裁判所の手続です。

日本の相続では、相続人どうしが遺産分割協議をして名義を移すことが多く、家庭裁判所が全件に関与するわけではありませんが、カリフォルニア州では、一定額を超える遺産について、裁判所の監督の下で財産を整理し、分配する手続を経る必要があるのです。

このプロベートは、時間も費用もかかる手続で、質問者さんのように財産を受け取る方が日本にお住まいのケースでは、負担がさらに大きくなりがちです。

次回は、このプロベートの中身と、それを回避するための具体的な方法を考えていきたいと思います。


ワールドカップの余韻も残る週末ですが、こちらは朝晩が涼しく、夏らしいカラッとした天気が続いています。

皆さんも体調に気をつけて、また一週間がんばっていきましょうね。

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  • 第1回(本記事):国際結婚と相続-アメリカから日本の甥姪に相続させたい(1)_1533

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