法律ノート 第1479回 弁護士 鈴木淳司
Jun 30, 2025
アメリカ東海岸はものすごい猛暑が襲っているようですね。
日陰でも汗が止まらないと嘆いている友人と話をしていました。
天気に関してはカリフォルニアは湿度も低く過ごしやすいので、助かっていますが、それでもベイエリアを離れると暑いですね。
さて、今回の法律ノートは前二回考えてきた質問に対する回答を一時お休みさせていただき、2025年7月1日から発効する新しいカリフォルニア州法について考えさせてください。
消費者保護の法律が目立ちますが、裏からいうと企業もコンプライアンスを求められる義務が生じてきます。
以下、すべてを取り上げることはできませんが、主な法改正について考えていきましょう。
前回の質問については次回以降また、考えていきたいと思います。
1.カリフォルニア州における最低賃金の引き上げ
カリフォルニア州は全米でも最も高い最低賃金を設定している州の一つですが、2025年7月1日には、州内の複数の都市や郡でさらなる最低賃金の引き上げが実施されます。
これは、生活費の高騰に対応し、低賃金労働者の生活を安定させることを目的としています。
ソノマ郡では州内で最も大幅な引き上げが行われ、時給が28%増の$23.15となります。
サンフランシスコおよびバークレーの両市では時給が$19.18に引き上げられます。
エメリービルにおいては、時給が$19.90に上昇します。
エメリービルもサンフランシスコ湾岸地域に位置し、高い生活費に直面しています。その他の主要都市としてアラメダ($17.46)、フリーモント($17.75)、ロサンゼルス市($17.87)、ロサンゼルス郡(非法人地域)($17.81)、ミルピタス($18.20)、パサデナ($18.04)など、多くの都市で最低賃金が上昇します。
これらの最低賃金引き上げは、特にサービス業や小売業の企業にとって、人件費の増加という形で直接的な影響を及ぼしますので、ビジネスの側からみると、経営を圧迫するため、ビジネスの展開の足かせになる可能性が強いです。
サンフランシスコでも小売がなかなかコロナ禍以前の基準まで戻りませんが、この状態が続くように感じています。
企業は、事業運営の効率化、価格戦略の見直し、または従業員の生産性向上などの対応が必要になるでしょう。
一方で、労働者にとっては、可処分所得の増加により、地域経済の活性化にもつながる可能性があります。
2.「クリック・キャンセル」オプションの義務化
サブスクリプションサービスを提供する企業に対し、消費者が簡単にサービスを解約できる「クリック・キャンセル」オプションの提供を義務付ける法律が発効します。
消費者保護を強化し、不透明な自動更新や解約プロセスから消費者を守るためです。
企業は、サブスクリプションの登録プロセスと同様の簡単に解約できる解約方法を提供する必要があります。
例えば、オンラインで登録した場合、オンラインで解約できるようにしなければなりません。
電話の担当者とのやり取りなしに、消費者が自由にオンラインでサービスの解約をできる「シンプルなメカニズム」を提供することが義務付けられます。
また企業は、年間の料金詳細と解約方法を記載したリマインダーを消費者に送付することが義務付けられました。
これにより、消費者は契約内容と自身の解約権について常に把握できるということになります。
この法律は、ストリーミングサービス、食品宅配、その他のサブスクリプションベースのサービスなど幅広いビジネスに適用されることになります。
消費者にとってサブスクリプションサービスの管理を簡素化し、意図しない自動更新料金の発生を防ぐ上で非常に有益です。
企業にとっては、顧客サービスの改善と透明性の確保が求められ、既存の解約プロセスを見直す必要があります。
連邦取引委員会(FTC)の「クリック・キャンセル」規則とも整合性が取れており、カリフォルニア州の企業は連邦および州の要件を満たす必要があります。
3.Airbnbおよび類似のレンタルサービスにおける透明性向上
Airbnbのような短期レンタルプラットフォームに対し、清掃料金やその他の反則金などの追加費用をチェックアウト時に開示することを義務付ける法律が施行されます。
これにより、利用者は予約を確定する前に、総費用を明確に把握できるようになります。
7月1日の法律発効後は、プラットフォームを提供する企業は、清掃料金、サービス料、そして利用者が特定の清掃作業を完了しなかった場合に発生する可能性のある反則金を含む、全ての費用を「予約完了前」に明示しなければならなくなりました。
そしてこの明示義務に違反した者には、最大10,000ドルの民事罰が科される可能性が制定されました。
4.その他
上記の3つが多くの方に影響しそうな法改正ですが、その他にも、
(1)ペット保険の保険料開示義務が課せられ保険料の詳細な説明や契約条件の明示が必要になります。また
(2)不妊治療の保険適用義務化が法定され、多くの医療保険プランに対し、体外受精(IVF)を含む不妊の診断と治療をカバーすることが義務付けられます。
これは、不妊に悩むカップルや個人が、経済的な負担を軽減しながら治療を受けられるようにするための重要な一歩です。
(3)中学校および高校に対し、生徒のIDカードに「988自殺・危機ホットライン(988Suicide and Crisis Lifeline)」の番号を記載することが義務付けられます。
若者のメンタルヘルス支援を強化し、危機に瀕した生徒が助けを求めるためのアクセスを容易にするための重要な措置ということです。
(4)また、裁判所の出廷に関してですが、少年事件および民事事件におけるリモート審理が2027年まで延長され、バーチャルな訴訟手続きのための新しい技術標準が導入されます。
パンデミック中に導入されたリモート審理のオプションが延長されることで、司法へのアクセスが向上し、遠隔地からの参加や身体的制約のある人々の負担が軽減されます。
他にも裁判所の通知を電子化することが義務化されます。
紙がどんどん裁判から消えていくということになります。
一年の折り返し地点ですが、上記のような新法や法改正が発効しますので今回ご紹介しました。
すぐに皆さんの権利に影響するものは少ないのかもしれませんが、カリフォルニア州ではこのような動きがあります。
また次回から途中になっている質問を続けて考えていきたいと思います。
暑い夏ですが、虫さされや熱中症に気をつけながらアウトドアを楽しんでいきたいですね。
それではまた次回まで一週間夏を堪能しながらがんばっていきましょうね。
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