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アメリカで裁判、その法廷通訳士は大丈夫?_1157

法律ノート 第1157回 弁護士 鈴木淳司
Apr. 21, 2019

 今回は一回、皆さんからいただいている質問にお答えするのを休ませていただき、先週私が体験した状況を皆さんと一緒に考えさせてください。考えれば考えるほど深刻に思えてきたので、敢えて法律ノートで問題提起をした方が良いのではと思ってしまったほどです。

カリフォルニア州弁護士コラム―「法廷通訳」_1157

 先週から、ある難しい刑事事件の主任弁護人として他州で出廷をはじめました。被告人の一人は日本人で英語が話せません。ですので、主に外国語を話す被告人にはその権利を守るため、と手続きがどのようなものか理解させるために裁判所が通訳をつけます。

 日本でも、法廷通訳がつきますが、最近ではその担い手が減ってきているという記事を最近みたように思います。アメリカでは、主に各州の裁判所が通訳を認証し、試験等の能力認定方法を継続的にしながら、いわゆる「法廷通訳」を選定し、仕事を任せます。

能力の低い法廷通訳も存在する

 私も、20年以上法廷に行っていますし、日本人や他の外国人の事件も担当するので、通訳の方々にはよく出会います。ものすごく感心するような能力をお持ちの人もいいますが、まあ、おしなべてある程度の能力はあります。

 ところが、私は、どのような試験を通れば法廷通訳になれるのかよくわからないのですが、かなり能力が低い人も存在します。もちろん、仕事は通訳なので、法律家になるレベルでの法律用語の使い方に精通していないのはわかっていますが、基本的な単語も翻訳できない、という人もいます。

 まあ、いつもは笑って済む程度なのですが、刑事事件となると、被告人の人生がかかっていますので、少なくとも権利の理解や、手続の理解は、確実にしてもらわなければなりません。

「博士」の肩書を持つ通訳が…

 先日、私が法廷に立つと、私のクライアントの横に法廷通訳が立ちました。実は、その法廷に先立って、その通訳の方が入って簡単なインタビューがあったのですが、その時のその通訳の方の能力に、疑問を持っていました。一方で、名刺もいただきましたが、博士の肩書を入れられていたので、それなりに専門性が高いのであろうと思っていました。その私の期待は見事法廷で裏切られました。

 私が若い頃、ある著名な尊敬できる刑事弁護人と事件を一緒に担当したときに、その方から「鈴木、法廷では、参加者の肩書とか経歴とか見るな、法廷、その場に出てくることだけが、良くも悪くも事件の基礎になるのだ」とアドバイスを受けましたが、その言葉が頭をよぎりました。

思わず、法廷で「ちょっと待った」

 その通訳の方は、裁判官の発言を一言一句日本語に変換しなければなりませんが、まったくそれもせず、大事な、権利の告知についても、被告人本人が「何を言っているのかわからない」という始末。さらには、刑事の裁判の期日のことを日本語で「公判」というのですが(これは刑事訴訟法を読まなくてもわかると思いますが)、訳すときに「公聴会」と訳したことを耳にしたときには、さすがに私も「ちょっと待った」と法廷で言ってしまいました。

 被告人と私の怪訝な目線がどこに行っているのか、悟った裁判官は、一旦審理を止めて、私に「鈴木が訳せばいいじゃないか」と笑っていいました。私は弁護人ですから、立場的に中立に訳をするという立場にいません。もちろん法律用語やその意味について、日本語と英語で自在に使えるという自信はちょっとあるのですが、私はその役目を担えないのです。

 その後も、目を覆いたくなるような通訳が続きました。逐一私が、正しい通訳文をこそこそ耳打ちするような流れです。無事にその法廷は終わりました。

もし誤訳が分からなければ、恐ろしい状況に

 あとになって状況を反芻していたのですが、よく考えると恐ろしい状況です。私が日本語と英語をきっちりわかっているので、その場で通訳の能力について指摘し、誤訳を咎めることができました。

 しかし、通常アメリカ人の弁護士が弁護人であれば、通訳が何を言っているのかわからないわけです。そして、被告人は英語ができないから通訳が必要なわけで、日本語で通訳にクレームをいれても、何にもならない可能性があります。それも、一応裁判所のお墨付きをもらっている通訳ですからね。

 そうすると、「あなたは、以上を踏まえて、有罪か無罪かの答弁をしますか」という英語の訳を「あなたは、以上についてどう返答しますか。」などと訳されてしまうと、「よくわかりません」などと答えるしかなくなってしまいますよね。ホラーです。

通訳した内容によって裁判に影響する可能性も

 話を聞くと、その通訳の方は他の関連した刑事事件でも通訳をしたそうです。そうすると、その通訳した内容によって、裁判の結果に影響した可能性があり、判決を破棄することも可能なのじゃないかな、と考えを巡らせるようになってしまいました。ひいては、裁判制度にとっても、非常に深刻な問題になりますね。

 現実問題として、裁判所としても色々な言語の通訳が必要なのでしょうから、その確保も大変でしょうし、クオリティの維持も必要になってくると思います。一方では、被告人にとっては、一世一代の晴れ、ではないですが大舞台です。今の時代、それこそ、ある程度機械通訳とかにできないものでしょうか。それはまだまだなのかもしれませんが。

 公判は一度で終わらず、また近いうちに、二度目の公判があります。裁判の内容自体については、私はかなり準備万端なのですが、この通訳問題がこわいわけです。また、この通訳の方になったら、裁判官に「いい加減にしてほしいのですが」と頼むかな、でも頼んでもっとひどいひとが来たらどうしよう、とか、頼んだことで、審理が延期されちゃうのも嫌だ、とか、本論とは関係のないところで悩んでいます。法廷には色々なドラマがあるものですね。

 次回はまた、皆さんからいただいた質問を考えていきたいと思います。

 長い雨のあとの花が綺麗ですが、花粉も全開で私もかなり鼻がグズグズしてしまいます。それでも負けずに春を楽しんでまた一週間がんばっていきましょうね。


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