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アメリカで経営が困難に、破産すべきか(1)_1123





法律ノート 第1123回 弁護士 鈴木淳司
アメリカで経営が困難に、破産すべきか(1)_1123
Augut 21, 2018
元巨人の桑田真澄投手が夏の高校野球の始球式で投げましたが、彼の紳士的な立ち振舞いは素敵でした。今でも野球を愛しているんだなぁ、という気持ちが伝わってきました。しかし、アメリカの始球式には、打者はいないですが、日本は打者がちゃんと立っていますね。当たったらどうするのだと思いますが、早稲田の安倍球場からの伝統なのですね。
 
さて、今回から新しく法律ノート宛にいただいている電子メールでの質問を考えていきたいと思います。あまり個人的には得意な分野の法律ではないので、かなり一般論的な内容になりますが、がんばって皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
いただいている質問をまとめると「抽選でアメリカの永住権を取得できたので、5年ほど前からアメリカに移り住み、輸出入の会社を経営しています。最近では、競争が激しくなり思うように利益があがりません。他社との値段競争についていけない状況なのです。夫婦でやっている会社なので、実際個人の負債もかなりあります。色々相談をしているのですが、ビジネスを現在売っても負債がすべて返せない状況にあり、破産を勧められています。本意ではありませんし、日本人的な感覚かもしれませんが、破産ということについてかなり抵抗があります。アメリカで破産した場合、永住権しか持っていない私にはどのような影響があるのでしょうか。また破産した場合、負債は本当に減るかなくなるのでしょうか」という質問です。
 
破産(Bankruptcy)というのは、アメリカではかなり特殊な分野で、弁護士でも、破産だけに特化して業務を行っている人が多いと思います。
破産に関しては、連邦裁判所の専属の法律分野であり、州の裁判所は関係しません。破産というのは、簡単に言うと、借金を背負っている人が、現在の資産や将来の収入を考えると、借りたお金を返しきれない場合など、裁判所に申立をして、借金を免除してもらうか、持っている財産の範囲で、借りたお金を公平に分配する法律上の制度です。
破産を申し立てて、裁判所から、「免責許可(Discharge)」という許可をもらうことで、破産手続は基本的に完了します。
破産をアメリカで申し立てると、たとえば債権回収の執拗な電話などを止めることができます。これを自動停止(Automatic Stay)の効力といいます。
ですので、借金の取り立てなどで悩まなくなるというメリットが発生します。また、貸主から債権回収の訴訟を提起された場合などは、その裁判手続きも同じように自動停止します。さらに裁判所から免責を許可されると、基本的に負債を払うことを免除されます。
しかし、免除されるといっても、すべての負債が免除されるわけではなく、以下詳しく考えますが、一定範囲の負債は免責されません。アメリカでは一般的に個人の破産については、チャプター7とチャプター13という2つの主な方法が定められています。
7の方は免責をゴールとする方法で、13というのは、財産や収入を勘案して、再建が可能な場合に使われる方法です。7の方はほぼ財産がない、という場合に有効な方法ということになります。今回質問されている方も、自分の財産がどの程度あるのか、会社の負債といっても個人保証をつけられているようなので、保証している負債はどの程度の額なのか、などをすべて表にして、どの方法を使うか考えていかなければならないわけです。
破産で免責を受けると、クレジットカードの負債など、担保がついていない負債の支払いは免責されます。
ただ、破産を申し立てた人については免責されるとしても、保証人となっている人は免責されません。
ですので、たとえば、家族が保証人になってお金を借りているような場合には、家族は免責されず、支払いの義務は残るということになってしまいます。
よく、破産をしても「家族に迷惑をかける」というシナリオはこのような場合を指すのですね。クレジットカードだけでなく、未払いの請求書などもほぼ免責されますので、アメリカでは高額の医療費を払えないので、破産をするというのもニュースになります。
ただし、支払いを免責されたとしても、何か物を買った代金を支払わなかったような場合には、その物は、売主に返還されます。車や家具などは、支払い免責を受けた場合、返還しなければならないのです。
ここから次回続けていきたいと思います。
まだまだ暑い夏が続きます。ベイエリアは涼しいのですが、暑いエリアの方々は体調管理にくれぐれも注意されてください。また1週間がんばっていきましょうね。
 


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アメリカの司法制度ー連邦法?州法?(2)_1096

法律ノート 第1096回 弁護士 鈴木淳司
Feb. 14, 2018

 半分お笑いなのですが、私が窃盗の被害者になってしまいました。私は工事を自分でするのが好きで、週末にかっこよい壁を造りたいと思い、事前にインターネットで一つ25キロくらいするコンクリートの材料をオーダーしておきました。自分が運転する車にこの材料を30個乗せると重くて走れないと思って、ガソリンスタンドでリクルートしたメキシコ人のおじさんに現金を払うから運搬を頼みました。一緒にお店に行って、材料を積み込むと私が自分の車に行く間にトンズラされました。人を信用しない斜に構えた輩よりは人を信じて裏切られた方がまだ良いのですが、100ドルくらいの材料を窃盗して何になるのか、苦笑いしてしまいました。仕事もふくめ、今まで経験した事例で一番重い物を持って逃げられました。笑うしかないですね。

アメリカの司法制度ー連邦法?州法?(2)_1096

 さて、前々回から考えてきた「米国法制度は連邦法と州法の二重構造で、裁判所も連邦裁判所と州裁判所の二重構造で、いずれも原則三審制とのことですが民事・刑事の事件について、連邦裁判所・州裁判所の管轄をどのように分けるのでしょうか。わける基準を教えてください。」という質問と、「国立公園内で飲酒運転の罪で逮捕されましたが、通常の飲酒運転とは裁判が違うと言われています。どのような違いがあるのでしょうか」という質問を続けて考えていきましょう。

国立公園での飲酒運転は州法?連邦法?

 前回は日本とアメリカでは地方自治という考え方が根本的に違うということを考えました。アメリカの各州は日本の都道府県とは違って、かなり独立した自治能力を与えられていると思ってください。法律的な面を見ると、実際は各州とも似たり寄ったりです。一つの国ですから当たり前かもしれません。しかし、微妙な違いは確実に存在していて、各州がまず自己統治をしているという現実を理解してください。

 まず、今回の質問を見ると、まずはその質問の対象となっている州法ではどのようになっているのか確認しなければなりません。州法に引っかかる刑事事件や、民事事件は、州法で対応されるのが原則ということで理解してください。今回の質問にある飲酒運転は、確実に各州で取り締まる法律があります。そうすると、まずは、州法が先行して適用されることになります。州の管轄内で逮捕されれば、その管轄内の州法によって判断されるということになります。

 今回質問されている方は連邦の管轄である国立公園で逮捕されているようです。そうすると場合によっては、州と連邦の両方の法律が適用されるかもしれません。州の警察に逮捕されていないのであれば、連邦の法律のみ適用されたうえで、起訴となる可能性もあります。すると、連邦裁判所で判断される可能性があります。

 今回質問されている方も、飲酒運転で逮捕されているのであれば、どちらの法律も適用可能です。そうすると、何か刑事的な問題が発生しているのであれば、事例によっては州でも連邦でも罪に問われる可能性はあるということになりますね。

連邦の法律が適用される場合

 では、連邦の法律はどのような場合に適用されるのでしょうか。実は連邦憲法その他の連邦の法律で、連邦政府が口出しをできる事例は決められています。ここでは、いくつかご紹介しておきましょう。

 まず、連邦で定められた法律に抵触する事例については、連邦政府が口出しをできることになっています。たとえば、連邦が専権を持つ、特許、郵便、そして移民関係などが挙げられます。これらの事項は連邦裁判所が管轄していて、事件になれば、州は口出しをできません。

 次に、外国が相手方になるような事件については連邦が専権を持つことが憲法上決められています。通商の問題などは連邦政府の専権となります。

 そして、州をまたぐ紛争、たとえば州対州の事件、あるいは麻薬の事件で州をまたぐ事件などは連邦の管轄になります。ここで、重要なのは、ニューヨーク州とニュージャージー州が、エリス島を巡って裁判をするのは確実に連邦の事件となり、州の裁判所は取り上げません。

 しかし、たとえば、麻薬の事例などは、州の法律にも抵触しますし、連邦の法律にも抵触します。こういう場合には、ロス市警の刑事コロンボが出てきて捜査をしているときに、FBIの捜査員も捜査をしていて、一つのドラマになるということがあり得るわけですね。

相手が州内にいるかどうかで提訴先が変わる

 私が今回25キロのコンクリートの塊を30個盗まれたという事例では、相手の人がカリフォルニア州内にいれば、州の裁判所に提訴することになりますが、メキシコにいる場合には、州および連邦の裁判所で提訴できることになるのかもしれません。

 いつも、雨の多い2月ですが、カリフォルニアは暖かい日が続いています。夏の干ばつを気にしつつ、また一週間花の咲く気候をたのしんでいきたいと思います。風邪が流行っていますので、皆さんも気をつけてくださいね。


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