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米就業中。それは「ハラスメント」か?(3)_1161

法律ノート 第1161回 弁護士 鈴木淳司
May 18, 2019

 政治や歴史を深く勉強していない米国大統領が、移民法の改革を大々的に発表しました。内容を見ると、全体の永住受け入れに関して、総数は加減がないものの、親族ベースの永住権を半減し、教育や仕事などの要素をポイントに化して取得する永住権を倍増させ、難民申請を激減させようとしています。

 また、メキシコとの国境における「壁」にも固執しています。議会はねじれているので、簡単には通らず、すぐに制法化されることはないようです。ただ、歴史的にも権力を持つと建造物に固執する君が多くいますが、歴史は繰り返されるのでしょうか。

それは「ハラスメント」か?(3)_1161

 さて、過去2回考えてきた質問に対するお答えを今回続けていきたいと思います。

 「日本で5年ほど働いていたのですが、応募をして、今米国にある企業に3年ほど前から就職しています。まだ規模はそれほど大きくないテック関係の会社です。学生の頃、アメリカに住んでいたので、英語には困っていません。私の職場の上司がアジア系の方なのですが、いろいろな場面でパワハラに遭っています。仕事をちゃんとしても難癖つけられて何度もやり直しをさせられたり、大勢の前で恥をかかされたりすることもしばしばあります。同僚に相談しても、そういう性格だから気にするな、できるだけ無視をしておけ、というのが意見です。私もできるだけ、リモート(自宅勤務のことか?)で仕事をして、職場で顔を合わせるのを避けています。しかし、仕事に関しての嫌がらせとか難癖がエスカレートしてきているように感じますし、私自身もカウンセラーに相談をしています。職場には、直接相談できる人が実際いないので、困っています。このような場合に弁護士に相談して、なにか対応をすることが可能なのでしょうか」という質問でした。

客観的に見て違法か、利益を侵害する行為か

 実際、アメリカにおいて、日本風に言う「パワハラ」はどのような程度の損害が必要か前回考えましたが、簡単に証明できるものではありませんでした。

 もちろん、被害のベースとなる行為が明らかに違法なものであれば、損害が小さくても、損害を証明することは十分に可能なケースもあると思います。同様に、雇用関係がある場合には、一般的に力のない側が有利になるということもあります。とにかく具体的な事例の内容をよく考えないと回答をすることは難しい面はあります。

 今回質問されている方はカウンセラーにも相談されていると書かれています。

 しかし、雇用関係において、軋轢が生じているからと言って、即「パワハラ」だ、とは言えません。客観的にみて、違法な行為があるとか、利益を侵害する行為があるとか、言えなければならないのです。カウンセラーの方にも、状況を説明して、法的措置を取ることを考えているが、その程度に達するような状況にあるのか、聞いてみるべきでしょう。

 また、同様の内容を信頼できる同僚などにも聞いてみても良いと思います。とにかく、第三者が相談されている方の立場に立つとどう思うのか、聞いてみても良いと思います。もちろん弁護士に聞いても良いかも知れません。

上司としての会社への責任

 今回相談されている方は、上司とウマが合わないということはわかります。また、仕事の遂行に関して、自分ではちゃんとやっているが、上司はそうは思わない、ということと、仕事の内容について、多くの同僚の前で指摘、注意されているといったことのようです。

 実際にこのような上下関係はどこの職場にもある程度存在すると思います。上司にしても、仕事があるわけで、部下をちゃんとコントロールして、仕事の能率をあげたり、会社の利益をあげなければなりません。上司として、もちろん部下を注意したり、状況を改善することはできるでしょう。もちろん会社に勤務すれば、周りは自分が納得するような人ばかりではないでしょう。自分が環境を決めたいのであれば、自分で事業をするしかありません。

自分の能力の範囲外にあるハラスメントか

 そうすると、今回質問されている方にしても、会社が何を求めているのか、そして自分にはその能力があるのか、能力について客観的な判断をしなければなりません。もちろん、自分の能力の範囲外である、セクハラとか、人種、宗教などのハラスメントに関しては許されるものではありません。

 しかし、今回の質問をみると、上司の批判は質問者の能力についてのみ論じられているように思います。そうすると、そのことで上司の言うことが納得できないとしても、即ハラスメントにはならないように思うのです。ですので、やはり自分の状況について客観的な意見を周りからもらうことが重要なのではないでしょうか。

 今回の質問に関してのお答えはこの辺までにして、また次回新しくいただいている質問について考えていきたいと思います。

 春なのに、まだ嵐がベイエリアに吹いていて、雨の週末になりそうです。花粉も少し落ち着くと良いと思いますが。朝晩寒い日もまだありますので、健康に留意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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米就業中。それは「ハラスメント」か?(2)_1159

法律ノート 第1159回 弁護士 鈴木淳司
May 9, 2019

 歯の被せ物が欠けたので、歯医者に行ったのですが、技術の進歩にびっくりしました。私が経験していなかっただけかもしれませんが。歯医者に行き、歯を削って型をとり、その型を基にした被せ物ができてから再度歯医者に行くというのが一般的だと思っていました。

 しかし、今回の治療は、歯の3Dスキャンをコンピュータで撮り、そのデータが歯を削り出す機械に送られ、できた歯はその場で窯の中で焼かれました。1時間も経たずに被せ物が完成し、全行程2時間で、また歯が復活しました。工程も見せてもらいましたが、すごいなぁ、と感心させられました。

それは「ハラスメント」か?(2)_1159

 さて、今回は前回から考えてきた質問です。

 「日本で5年ほど働いていたのですが、応募をして、今米国にある企業に3年ほど前から就職しています。まだ規模はそれほど大きくないテック関係の会社です。学生の頃、アメリカに住んでいたので、英語には困っていません。私の職場の上司がアジア系の方なのですが、いろいろな場面でパワハラに遭っています。仕事をちゃんとしても難癖つけられて何度もやり直しをさせられたり、大勢の前で恥をかかされたりすることもしばしばあります。同僚に相談しても、そういう性格だから気にするな、できるだけ無視をしておけ、というのが意見です。私もできるだけ、リモート(自宅勤務のことか?)で仕事をして、職場で顔を合わせるのを避けています。しかし、仕事に関しての嫌がらせとか難癖がエスカレートしてきているように感じますし、私自身もカウンセラーに相談をしています。職場には、直接相談できる人が実際いないので、困っています。このような場合に弁護士に相談して、なにか対応をすることが可能なのでしょうか」という質問を続けて考えていきましょう。

専門家による意見が必要

 前回、カリフォルニア州で適用されそうな法律については考えました。今回いただいた質問を考えると、性的な問題はなさそうですし、はっきりハラスメントがあったかどうか、と言い切れないようにも思います。

 カリフォルニア州においては、「パワハラ」というのは、限られた事例にあてはまります。実質的に重大な精神的な被害が発生したことが、一部では要件になるわけですから、単に不快に思う程度では足りません。

 また、重大な精神的な被害というのも、自分が「重大だ」と思っているだけでは足りずに、必ず医師等の専門家により客観的な意見が必要になってきます。

 今回の事例では、カウンセラーにも相談をされているということですが、自分の精神的な問題を相談されているのか、または職場での人間関係について相談されているのか、はっきりはわかりません。精神的な問題に関して相談をしているのであれば診断書が出される可能性があり、ハラスメントの主張が可能になるかもしれません。

自分だけで考え込まない

 一方で、職場の人間関係についての対処法について相談しているという程度に限られるとハラスメントのクレームをするサポートとするには足りないかもしれません。

 今回の質問の文面を見ると、一般的な使い方で「パワハラ」という言葉を使われているようですが、やはり一般的な人の感覚で「パワハラ」というだけでは法律的には事件化できないと思います。

 こういった場合には、やはり他の職場の人に相談するなり、意見を聞くなり(カジュアルな方法で構いません)、他の人がどう考えるかを聞いてみたほうが良いと思います。とにかく、自分で考え込まない方が良いです。たとえば、仕事を押し付けられる、という主張については、そのこと事態だけではパワハラとは言えない可能性がありますので、周りの人達に対してはどのような処遇をしてきたのか、などを推し量る必要もあります。また、周りの人が揃って、「まあ通常の上司の対応だ」と言っている場合には、法律的に成立しそうな「パワハラ」にはならない可能性があります。

陪審裁判

 アメリカでは、日本と違って事件が裁判になると、陪審裁判という制度に付されます。

 そこでは、素人であるアメリカ国籍を持った人たちが12人いて、裁判における主張を検討します。

 したがって、自分で「被害に遭っている」と思っていても、実際は最終的には12人の人達が客観的に見るとなんら被害がない、という判断をする可能性もあるのです。

 ですので、自分が「パワハラ」に遭っているのではないか、という感覚を持ったのであれば、まず周りの人で信用できる人を巻き込んで、客観的な意見をもらうことがかなり重要になるのですね。

次回、もう一回続けて考えていきたいとおもいます。

新緑の季節です。外出を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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