じんけんニュース 弁護士 鈴木淳司 11-05-2026
Nov 5, 2026
■ 帰化審査における「善良な品行」の厳格化と家族呼寄せ(I-130)の審査の遅延――永住権者のご家族と留学生に及ぶ新たな負担
11月3日の中間選挙が終わり、2027年1月3日には新しい議会(第120議会)が開会します。もっとも、議会の構成が変わったとしても、行政機関が規則や政策メモ(Policy Memorandum)によって進めてきた変更が直ちに失効するわけではありません。今回は、11月4日にUSCIS(米国市民権移民局)が公表した帰化審査に関する新しい政策メモ、家族呼寄せの請願書(I-130)の審査の変化、OPT手数料の規則案、そして11月分のビザ速報について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
1 帰化審査における「善良な品行」と扶養義務・公的給付
(1)政策メモPM-602-0201の内容
帰化(Naturalization)を申請する永住権者は、法定期間(原則として申請前5年間、米国市民と婚姻し同居している場合は3年間)から宣誓に至るまで、「善良な品行(Good Moral Character、GMC)」を有していたことを立証しなければなりません(移民法第316条(a)(8 U.S.C. §1427(a))及び移民法第101条(f))。今回のPM-602-0201は、2025年8月の政策メモに続き、GMCの判断対象を扶養・身元保証・公的給付の分野にまで具体的に広げるものです。
政策メモは、①扶養家族に対する扶養の故意の不履行、②公的給付に関する詐欺、③I-864(扶養宣誓供述書、Affidavit of Support)、I-864A又はI-134に基づく義務の不履行、④「自立を意図的に避ける」形での公的給付の受給――のいずれかに当たる場合、GMCを欠くと判断され得るとしています。扶養の不履行は、もともと「酌むべき事情(Extenuating Circumstances)」がない限りGMCを否定する事由として連邦規則に定められていますが(8 CFR §316.10(b)(3)(i))、今回の政策メモは、裁判所の命令がなくても扶養義務は問われ得ること、米国外での扶養義務も考慮されることを明記しました。
在米日本人の皆さんにとって注意すべきは、例えば日本で協議離婚をし、日本に住むお子様の養育費を支払っていない永住権者が、この類型に当たり得るという点です。また、ご家族を呼び寄せる際にI-864に署名した永住権者は、呼び寄せたご家族が資力調査に基づく公的給付(Means-Tested Public Benefits)を受けている場合、ご自身の帰化審査で不利に扱われる可能性があります。SSI(補足的保障所得)の受給者が長期の国外渡航を届け出なかった場合も例示されており、日米を行き来する高齢の永住権者の方にも関係します。USCISは今後、Policy Manualの改訂と、公的給付の利用状況や扶養の状況を尋ねる設問を追加したN-400の改訂を予告しています。帰化申請を考えている方は、申請の前に、養育費の支払記録、身元保証をしたご家族の状況、公的給付の受給歴を整理し、弁護士にご相談いただくことをお勧めします。
(2)有権者登録の誤りと帰化審査
なお、カリフォルニア州ではDMV(陸運局)で運転免許を取得・更新すると有権者登録の手続に進む仕組み(Motor Voter)が採られており、永住権者が意図せず登録されてしまうことがあります。米国市民であるとの虚偽の主張は原則として免除(Waiver)のない入国不許可事由とされ(移民法第212条(a)(6)(C)(ii))、N-400でも有権者登録・投票の有無を必ず問われます。心当たりのある方は、ご自身で登録の取消しをする前に、まず弁護士にご相談ください。
2 家族呼寄せの請願書(I-130)の審査がフィールドオフィスへ
家族呼寄せの最初の手続である外国人親族のための請願書(Petition for Alien Relative、I-130)の審査にも、大きな変化が生じています。これまで、I-485(永住権申請)と同時に提出しない単独のI-130、例えば日本にいる配偶者を領事手続(Consular Processing)で呼び寄せる場合のI-130は、主にサービスセンターで書面審査されてきました。ところが、2026年春以降、これらのI-130が各地のフィールドオフィス(地方事務所)に移され、面接を前提とした処理に変わりつつあります。USCISの公開統計でも、サービスセンターで係属するI-130は、2026年3月末の約206万件から6月末には約14万件に激減しています。USCISは方針を公表しておらず、移送の通知も出ないことが多いようです。
USCISが掲載する処理期間(80%の案件が完了するまでの期間)も、米国市民の近親者(配偶者等)について、2026年初めの約17か月、9月の25.5か月から、10月には「全フィールドオフィス」で83.5か月(約7年)と表示されるようになりました。移送直後のため見かけ上長くなっている面はあるにせよ、審査の遅延は避けられないと考えるべきです。面接では請願者(米国市民又は永住権者)の出頭が求められ、受益者が米国内にいれば受益者も呼ばれ得ます(8 CFR §103.2(b)(9))。観光で米国を訪問中の受益者に同席を求めた例も報告されています。
特に影響が大きいのは、日本に住む米国市民が日本人の配偶者を呼び寄せる場合です。請願者が国外に住んでいる場合にどこで面接を行うのかは明らかにされていません。国外在住の米国市民は、「例外的な事情(Exceptional Circumstances)」があれば在外公館に直接I-130を提出(Direct Consular Filing)できる場合がありますが、既にUSCISにI-130を提出している場合には利用できないため、提出前に方針を決める必要があります。また、受益者が米国内に適法に滞在している場合には、I-130とI-485を同時に提出することで、I-485の処理期間に沿った審査を受けられます。なお、K-3ビザは近年の発給件数がごくわずかで、実質的な代替手段にはなりません。係属中の方は、USCISのオンラインの案件状況で移送の有無を確認し、婚姻の実態を示す最新の証拠(共同の口座、賃貸契約、写真等)を整理しておくことをお勧めします。不合理な遅延に対しては、職務執行令状(Mandamus)や行政手続法(APA)に基づく訴訟も選択肢になります。
3 OPTに7万ドルの手数料――国土安全保障省(DHS)の規則案
DHSは10月8日、OPT(Optional Practical Training、学位取得に関連する実務研修)に手数料を課す規則案を公表しました(91 FR 64566)。学校が支払う手数料で、初回のOPT推薦には1人当たり7万ドル、2回目以降(STEM OPTの延長等)には3万ドルが課され、未払の場合はEADが発行されません。施行は最終規則の公布から60日後で、施行日前に推薦を受けた学生には適用されない予定です。2027年の春又は夏に卒業予定のお子様がいらっしゃるご家庭は、最終規則の施行前にDSOの推薦を受けておけるよう、早めに学校と相談しておくことが現実的な対策になります。なお、意見公募(Docket ICEB-2026-0100)は11月9日が締切です。
4 11月分ビザ速報と申請書の送付先変更
11月分のビザ速報(Visa Bulletin)では、家族ベースの区分が大きく動きました。日本を含むAll Chargeabilityでは、最終処理日(Final Action Date)がF1で2021年1月22日、F2Bで2020年8月22日、F3で2015年10月22日、F4で2012年10月22日と、いずれも1年前進しています。F2Aは最終処理日が2026年10月22日、申請受付日(Date for Filing)は「C」のままです。雇用ベースでは、EB-2の最終処理日が2025年4月1日へ、EB-3が2024年6月15日へ前進し、EB-1は引き続き「C」です。USCISは11月も申請受付日チャートの使用を認めています。もっとも、2で述べたとおり、その手前のI-130の審査が詰まっているため、順番が進んでも直ちに永住権の取得に結び付くとは限らない点にご注意ください。
また、USCISは10月以降、I-130、I-485、I-129、I-140等の多数の様式について送付先(ロックボックス)を変更しており、旧送付先での受付は11月9日消印分までとされています。送付の直前に、USCISの各様式ページの「Where to File」をご確認ください。
このように、在米日本人の皆さんとそのご家族に関わる変化が続いており、特に家族の呼寄せや帰化については、申請前の準備と進め方の選択がこれまで以上に結果を左右します。ご不明な点がありましたら、お気軽にご相談ください。また新たな動きがありましたら、共有してまいります。
関連する米国法律リソース
- 2026年10月分ビザ・ブレティン(米国国務省)
- Form I-864(扶養誓約書)- USCIS
- Form I-485(永住権申請)- USCIS
- 滞在資格・認められた滞在・不法滞在の違い(AILA)
免責事項
本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の個別案件に対する法的助言ではありません。記載内容は執筆時点(2026年10月)の情報に基づいており、法律や規制は変更される可能性があります。D/S廃止規則は裁判所の命令により施行が延期されていますが、今後の判断や上訴により状況が変わる可能性があります。また、雇用終了後の60日猶予期間の廃止は規則案の段階であり、現時点で効力を有しません。
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関連記事
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