じんけんニュース
原文:弁護士 鈴木淳司/編集:JINKEN.COM事務局
2026年9月から10月にかけて、米国移民法の分野では大きな動きが相次ぎました。予定どおり始まったものもあれば、直前で止まったもの、まだ案の段階のものもあります。
この記事では、ご自身に関係のある項目だけを読んでいただけるよう、立場ごとに整理しました。懸念事項が該当しないと分かれば、一つの安心材料にしていただけると思います。
*制度の根拠や裁判の詳細は、詳細版「移民法速報 2026年10月」をご確認ください。
留学生・交流訪問者の方
変更点
留学生(F-1)や交流訪問者(J-1)の滞在期間を、「在籍期間中(D/S)」から最長4年などの固定期間に切り替える規則が、9月15日に始まる予定でした。
しかし前日の9月14日、連邦地方裁判所が施行を延期しました。そのため、現在も従来どおり「D/S」で滞在できます。
ただし、規則そのものがなくなったわけではありません。今後の裁判や政府の上訴によっては、再び動き出す可能性があります。
確認しておきたいこと
- 米国に入国するたびに、I-94の滞在期限が「D/S」と記録されているかを確認する
- 在籍や学業の条件を守り、滞在資格を維持する
- 学校の留学生担当者(DSO)からの案内に注意しておく
永住権を申請中・申請予定の方
変更点
一つ目は、公的扶助(パブリック・チャージ)の新しい基準です。9月18日から、永住権の審査で、Medicaid(カリフォルニア州ではMedi-Cal)やSNAP(食料支援)などの利用も、総合的な判断の一要素として考慮され得るようになりました。利用したことがあるだけで直ちに不許可になるわけではありませんが、世帯全体の利用歴が審査の対象になっていきます。
二つ目は、扶養誓約書(Form I-864)の新しい様式です。
10月1日から新版の提出が求められています。新版では、保証人が自分の信用情報の取得に同意する条項が加わりました。
三つ目は、10月分のビザ・ブレティン(永住権の順番表)です。
日本出生の方が該当する雇用ベースの第2優先(EB-2)と第3優先(EB-3)で、承認の目安となる日付が後ろに戻りました。
一方、10月は家族ベース・雇用ベースとも、より早い日付の「申請受付日」の表に沿ってI-485を提出できます。提出できることと、すぐに承認されることは別である点にご注意ください。
四つ目は、期限の数え方です。
10月23日以降、「21歳の誕生日まで」のような期限は、誕生日が土日や祝日に当たっても翌営業日には延びません。
確認しておきたいこと
- 申請前に、ご家族を含めた公的支援の利用歴を整理しておく
- I-864は必ず新版(08/24/26版)を使い、クレジット・フリーズを設定している方は解除の準備をしておく
- お子様の年齢が関わる申請は、誕生日の曜日を確かめ、余裕をもって提出する
- 申請中は受理通知(I-797)や就労許可証(EAD)を常に携行する。申請中の方でも移民当局に拘束される例が報告されています
- 過去に不法滞在の期間がある方は、アドバンス・パロール(Advance Parole、事前渡航許可)で出国する前に必ず弁護士に相談する
就労ビザで働いている方・雇用主の方
変更点
H-1BやL-1、E、O-1、TNなどの資格で働く方には、現在、仕事を辞めた後も最長60日間、次の手続を準備できる猶予期間があります。この猶予期間をなくす規則案が9月11日に公表されました。
まだ案の段階で、現時点では60日の猶予は使えます。意見公募は11月10日までです。また、退職後にB-2(観光)へ切り替えて次の仕事を探す方法も、認められにくくなっています。
H-1Bについては、日本など国外から新たに人材を呼び寄せる際の10万ドルの支払いを求める入国制限が、2027年9月21日まで延長されました。
現在は裁判所の判断により支払いは求められていませんが、今後変わる可能性があります。
また、雇用主が過去1年以内に行った人員削減の内容も、審査で考慮されることになりました。
確認しておきたいこと
- 転職・退職・帰任を考えている方は、「辞めてから次を探す」のではなく「辞める前に次の申請を出しておく」段取りを意識する
- 雇用主の方は、退職や帰任の通知日と最終勤務日の設定が、従業員とご家族の滞在資格に直結することを踏まえて計画する
- 米国子会社で人員削減を行った企業は、H-1B申請の時期と準備について、早めに弁護士と相談する
移民ビザで渡米予定の方(家族の呼び寄せ・DV当選者)
変更点
大使館・領事館で移民ビザを申請する際のオンライン申請書(DS-260)の設問が増えました。
過去15年間の旅券や渡航歴と、それぞれの渡航費用を誰が負担したか、過去の配偶者やパートナー、兄弟姉妹全員の情報などが求められます。
確認しておきたいこと
- 日本の顔認証ゲートでは旅券に出入国印が残らないため、出入国在留管理庁への出帰国記録の開示請求も含めて、早めに渡航記録を集める
- 兄弟姉妹や過去の配偶者の情報は、戸籍謄本と照らし合わせてから記入する
- 事実婚・内縁の関係にある方は、パートナーに関する設問への回答で申請区分が変わることがあるため、記入前に弁護士に相談する
すべての方に共通する注意点
移民局(USCIS)に紙で提出する申請書の署名は、必ず原本に手で書いてください。
手書きの署名を撮影した画像を貼り付けたものは無効とされ、受理後でも直す機会のないまま不許可になることがあります。
原本をスキャンしたものや、原本の郵送であれば問題ありません。
また、申請書の様式は予告なく新版に切り替わることがあります。ご自身で申請される方は、提出の直前にUSCISのウェブサイトで様式の版を確かめると安心です。
妊娠中に渡米される方は、出産目的の渡航への審査が厳しくなっているため、渡航目的と費用の負担について一貫した説明ができるよう準備しておくことをお勧めします。
制度は短い期間で変わることがあります。申請や渡航の前には、最新の状況を弁護士に確認していただくのが確実です。ご自身のケースがどれに当たるか分からない場合は、JINKEN.COMのブリッジサービスで、弁護士への相談に向けた課題整理をお手伝いしています。
本記事は、カリフォルニア州弁護士 鈴木淳司の記事をもとに、JINKEN.COM事務局が一般の方向けに再構成したものです。
関連する米国法律リソース
- 2026年10月分ビザ・ブレティン(米国国務省)
- Form I-864(扶養誓約書)- USCIS
- Form I-485(永住権申請)- USCIS
- 滞在資格・認められた滞在・不法滞在の違い(AILA)
免責事項
本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の個別案件に対する法的助言ではありません。記載内容は執筆時点(2026年10月)の情報に基づいており、法律や規制は変更される可能性があります。D/S廃止規則は裁判所の命令により施行が延期されていますが、今後の判断や上訴により状況が変わる可能性があります。また、雇用終了後の60日猶予期間の廃止は規則案の段階であり、現時点で効力を有しません。
本記事の内容に基づいて行動される場合は、必ず専門の弁護士にご相談のうえ、個別の状況に応じた適切な法的助言を受けてください。本記事を読まれたことにより、JINKEN.COMまたは執筆者との間に弁護士・依頼人関係が成立するものではありません。
本記事の利用により生じたいかなる損害についても、故意または重過失がある場合を除き、JINKEN.COMおよび執筆者は責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。
関連記事
- 移民法速報 2026年10月-D/S廃止の施行延期、公的扶助の新基準、EB-2・EB-3の後退(詳細版)
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